28日(火)午後6時45分ごろ、東十条囲碁将棋教室に入ると、Miy氏とTom氏の姿があった。久しぶりである。
Miy氏とTom氏はLPSA駒込サロンの常連で、この2人が初期のサロンを引っ張ってきた。当ブログにも何度か登場し、2008年末に行われた「LPSAフランボワーズカップ」観戦後の、ファミレスでの爆笑トークは、いまや語り草になっている。
私は自ブログの存在価値は認めないが、過去の出来事を網羅している点で、活動記録として幾ばくかの価値があると思う。
話を戻すが、LPSAが芝浦に移ってからは2人とも足が遠のき、必然的に私たちとも会う機会がなくなった。
それが先日、Miy氏からW氏に連絡があり、W氏が東十条教室のことを話して、きょうの来席になったらしかった。
それで私もW氏から連絡をもらい、大いに楽しみにしての来席となったのだが、きょうはTom氏までいて、驚いた。
「ナニ大沢さん、五段になったんだって?」
Tom氏が私を見て、快活に言う。Tom氏もMiy氏も当時と全然変わらず、お元気そうで何よりである。変わったのは私の体型と頭だ。
「はあ? 誰がそんなことを。三段ですよ三段、私は」
Miy氏はS君と対局中。ほかにW氏がおり、奥のスペースでは植山悦行七段が級位者相手に3面指しをしていた。その中のひとりはTak氏で、氏も駒込サロンのセミレギュラーだった。けっこうなメンツが揃い、昔を思い出して懐かしい。
Miy-S戦が終わったようで、Miy氏の勝ち。「いい将棋を負けた…」とS君が不服そうだが、悪い将棋をひっくり返すのがベテランの,技だ。
今度はTom-S戦。ふたりの年齢差はどのくらいか。70歳前後離れているのではなかろうか。それがハンデなしで同じ競技ができる。これが将棋最大の魅力であろう。
将棋はTom氏の先手中飛車に、S君の居飛車穴熊。しかしこの戦いなら、S君のものだろう。S君が終始快調に攻めて、快勝した。Tom氏の実戦不足がありありで、これは正直、S君とは手合いが違うと感じたものだ。少なくともこの時点では。
級位者の指導対局が順次終わり、うち2人にW氏が1手詰の詰将棋を出題している。級位者には3手詰でも難しい、がW氏の持論なのだ。
私はしばし手持無沙汰だったが、Tak氏の将棋が終わったので、氏と将棋を指す。級位者の時間は7時で終わりだが、自由対局は引き続き構わないのだ。手合いは以前と同じ、二枚落ちである。
「大沢さんには昔、二枚落ちでボロ負けしたからなあ」
とTak氏は苦笑交じりに語るが、私はそんなことは忘れている。
対局開始。私はさっきのBR-Dの件で意気消沈しており、とても将棋どころではない。上の空だから△7三金と上がる前に△7三桂と跳ねてしまい、金の活用が難しくなった。仕方がないので、△5二玉と引いて△6三金と上がった。植山七段が見ていたら注意されるところである。
Tak氏、▲2四銀△同銀と捨て、▲1一角成。大駒が成りこんで下手十分のようだが、△3三桂と跳ねた上手も軽い。以下△2四の銀は下手の香と交換になったが、私の持駒は銀と香になり、これだけあれば下手玉攻略に十分である。
△6六歩とちょっかいを出して、以下誤魔化した。
さて、このあとはTom氏と対局である。もう植山七段に指導対局を受けてもいいのだが、勝手知ったる仲なので、その辺の段取りはグダグダだ。
将棋はTom氏の先手中飛車に、私は結局玉頭位取りに舵を取った。中盤、Tom氏の猛攻が始まったが、私は丁寧に受ける。
頃はよしと反撃し、△2七香の王手。以下▲同玉△3五桂▲1七玉△2八銀▲同玉△2七銀▲3九玉△4七桂不成(と金を取る)で、Tom氏の投了となった。
結果は私が幸いしたが、中盤まで難しい勝負だった。Tom氏と指すのは数年ぶりだったが、棋力は全然衰えてないと思った。
このあとは、私とMiy氏が指す。自由対局ばかりで、いよいよ駒込サロンの雰囲気になってきた。
五段と三段の対戦だから最低でも私が先手なのだが、なぜか振り駒になって、私の後手になった。▲7六歩△8四歩。矢倉模様になり、私は急戦を狙ったが、Miy氏も▲4六歩と突いて急戦模様。以下、相居飛車の手将棋となった。
どっちも攻めそうで攻めず、じっとしている。Tom氏が「2人はじっくりしてるねえ」と苦笑する。W氏は、「大沢さん、やっぱり強くなったなあ」と感心するように言った。
中盤――。桂2枚を得して私が十分だと思ったのだが銀交換から▲8四銀と打たれてみると、8三の飛車が死んでいる。通常は飛車を取っても銀を投資しているからそれほど得にはなっていないのだが、この場合▲8三銀成がさらに△8二角取りにも当たっているのが大きいのだ。これで私が非勢になった。
ところが私が、取られる寸前の角を△9三角と捌き、▲同成銀△同桂の局面は、死に体だった角桂が働いて、いくぶん挽回したと思った。
さらに△8五桂と跳んで、これが詰めろ。これはこちらに流れが来たようだ。
最後は▲5七金打△同竜▲同金△7八角成▲同玉△7七金▲6九玉△5七桂不成(と金を取る)まで、Miy氏の投了となった。
感想戦に移るが、うまく盤面を戻せない。Tom氏が「四段なのにしょうがねぇなぁ」と呆れる。
で感想戦だが、私が優勢になった最終盤を検討しているので、どうやっても私が優勢になってしまう。
「もうダメだよMiyちゃん」
とTom氏。
「いや、そうでもないんだよ」
とMiy氏。
私は思わず苦笑した。これは駒込サロンでの2人の常套句だったからである。駒込サロンではW氏(の将棋)が俎上に乗せられ、「こりゃダメだよ」とTom氏がサジを投げると、「いやそうでもないよ」とMiyが食い下がるという按配で、このやりとりが絶品だった。
本当に、駒込サロンが復活したようだった。
(つづく)
Miy氏とTom氏はLPSA駒込サロンの常連で、この2人が初期のサロンを引っ張ってきた。当ブログにも何度か登場し、2008年末に行われた「LPSAフランボワーズカップ」観戦後の、ファミレスでの爆笑トークは、いまや語り草になっている。
私は自ブログの存在価値は認めないが、過去の出来事を網羅している点で、活動記録として幾ばくかの価値があると思う。
話を戻すが、LPSAが芝浦に移ってからは2人とも足が遠のき、必然的に私たちとも会う機会がなくなった。
それが先日、Miy氏からW氏に連絡があり、W氏が東十条教室のことを話して、きょうの来席になったらしかった。
それで私もW氏から連絡をもらい、大いに楽しみにしての来席となったのだが、きょうはTom氏までいて、驚いた。
「ナニ大沢さん、五段になったんだって?」
Tom氏が私を見て、快活に言う。Tom氏もMiy氏も当時と全然変わらず、お元気そうで何よりである。変わったのは私の体型と頭だ。
「はあ? 誰がそんなことを。三段ですよ三段、私は」
Miy氏はS君と対局中。ほかにW氏がおり、奥のスペースでは植山悦行七段が級位者相手に3面指しをしていた。その中のひとりはTak氏で、氏も駒込サロンのセミレギュラーだった。けっこうなメンツが揃い、昔を思い出して懐かしい。
Miy-S戦が終わったようで、Miy氏の勝ち。「いい将棋を負けた…」とS君が不服そうだが、悪い将棋をひっくり返すのがベテランの,技だ。
今度はTom-S戦。ふたりの年齢差はどのくらいか。70歳前後離れているのではなかろうか。それがハンデなしで同じ競技ができる。これが将棋最大の魅力であろう。
将棋はTom氏の先手中飛車に、S君の居飛車穴熊。しかしこの戦いなら、S君のものだろう。S君が終始快調に攻めて、快勝した。Tom氏の実戦不足がありありで、これは正直、S君とは手合いが違うと感じたものだ。少なくともこの時点では。
級位者の指導対局が順次終わり、うち2人にW氏が1手詰の詰将棋を出題している。級位者には3手詰でも難しい、がW氏の持論なのだ。
私はしばし手持無沙汰だったが、Tak氏の将棋が終わったので、氏と将棋を指す。級位者の時間は7時で終わりだが、自由対局は引き続き構わないのだ。手合いは以前と同じ、二枚落ちである。
「大沢さんには昔、二枚落ちでボロ負けしたからなあ」
とTak氏は苦笑交じりに語るが、私はそんなことは忘れている。
対局開始。私はさっきのBR-Dの件で意気消沈しており、とても将棋どころではない。上の空だから△7三金と上がる前に△7三桂と跳ねてしまい、金の活用が難しくなった。仕方がないので、△5二玉と引いて△6三金と上がった。植山七段が見ていたら注意されるところである。
Tak氏、▲2四銀△同銀と捨て、▲1一角成。大駒が成りこんで下手十分のようだが、△3三桂と跳ねた上手も軽い。以下△2四の銀は下手の香と交換になったが、私の持駒は銀と香になり、これだけあれば下手玉攻略に十分である。
△6六歩とちょっかいを出して、以下誤魔化した。
さて、このあとはTom氏と対局である。もう植山七段に指導対局を受けてもいいのだが、勝手知ったる仲なので、その辺の段取りはグダグダだ。
将棋はTom氏の先手中飛車に、私は結局玉頭位取りに舵を取った。中盤、Tom氏の猛攻が始まったが、私は丁寧に受ける。
頃はよしと反撃し、△2七香の王手。以下▲同玉△3五桂▲1七玉△2八銀▲同玉△2七銀▲3九玉△4七桂不成(と金を取る)で、Tom氏の投了となった。
結果は私が幸いしたが、中盤まで難しい勝負だった。Tom氏と指すのは数年ぶりだったが、棋力は全然衰えてないと思った。
このあとは、私とMiy氏が指す。自由対局ばかりで、いよいよ駒込サロンの雰囲気になってきた。
五段と三段の対戦だから最低でも私が先手なのだが、なぜか振り駒になって、私の後手になった。▲7六歩△8四歩。矢倉模様になり、私は急戦を狙ったが、Miy氏も▲4六歩と突いて急戦模様。以下、相居飛車の手将棋となった。
どっちも攻めそうで攻めず、じっとしている。Tom氏が「2人はじっくりしてるねえ」と苦笑する。W氏は、「大沢さん、やっぱり強くなったなあ」と感心するように言った。
中盤――。桂2枚を得して私が十分だと思ったのだが銀交換から▲8四銀と打たれてみると、8三の飛車が死んでいる。通常は飛車を取っても銀を投資しているからそれほど得にはなっていないのだが、この場合▲8三銀成がさらに△8二角取りにも当たっているのが大きいのだ。これで私が非勢になった。
ところが私が、取られる寸前の角を△9三角と捌き、▲同成銀△同桂の局面は、死に体だった角桂が働いて、いくぶん挽回したと思った。
さらに△8五桂と跳んで、これが詰めろ。これはこちらに流れが来たようだ。
最後は▲5七金打△同竜▲同金△7八角成▲同玉△7七金▲6九玉△5七桂不成(と金を取る)まで、Miy氏の投了となった。
感想戦に移るが、うまく盤面を戻せない。Tom氏が「四段なのにしょうがねぇなぁ」と呆れる。
で感想戦だが、私が優勢になった最終盤を検討しているので、どうやっても私が優勢になってしまう。
「もうダメだよMiyちゃん」
とTom氏。
「いや、そうでもないんだよ」
とMiy氏。
私は思わず苦笑した。これは駒込サロンでの2人の常套句だったからである。駒込サロンではW氏(の将棋)が俎上に乗せられ、「こりゃダメだよ」とTom氏がサジを投げると、「いやそうでもないよ」とMiyが食い下がるという按配で、このやりとりが絶品だった。
本当に、駒込サロンが復活したようだった。
(つづく)