一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

中尾五段の順位戦復帰の目を考える・7

2018-03-22 00:05:41 | 目を考える
21日に行われたA級順位戦プレーオフ・稲葉陽八段と羽生善治竜王の一戦は、22時50分、98手までで羽生竜王の勝ち!! 羽生竜王は土壇場からの名人挑戦となった。
今年度の将棋大賞・最優秀棋士賞レースは、今年に入って、羽生竜王と藤井聡太六段との一騎打ちになった。個人的見解では藤井六段が一歩リードしていたが、この一局でイーブンに戻ったのではないか。
今月末の将棋大賞の発表、4月からの名人戦が楽しみである。

   ◇

中尾敏之五段(43歳)は今年度がフリークラス10年目。順位戦復帰の規定はいくつかあるが、代表的なものは「年度18勝12敗」である。中尾五段は今年度背水の陣だったがよく勝ち、ここまで「16勝10敗」or「17勝10敗」。勝ち数にズレがあるのは、次期NHK杯予選での勝ち数が分からないからである。
いずれにしても、あと1勝か2勝で、順位戦復帰となる。
だが中尾五段も各棋戦であらかた敗退してしまったので、残されたチャンスはほとんどない。
そして今日22日は、残る1棋戦、第44期棋王戦予選3回戦・日浦市郎八段との一戦がある。
中尾五段がこの将棋に負けたら、ほぼ引退。勝った場合もまだ1勝が必要かもしれないが、私はこれで18勝に達するような気がする。
その筋の専門家によると、まだ1勝が必要となった場合、手合課は今月中に対局(棋王戦予選4回戦)を付けるという。棋士を見殺しにすることはしない、というのだ。
しかし来週中にもう1局付けるのも、ずいぶん慌ただしい。そもそも日浦八段VS中尾五段戦は、もっと前に付けようと思えば付けられたのだ。
それなのにここまで余裕をもたせたということは、この一局が「マジック1」だからではあるまいか。だから以後の日程を考える必要がないわけだ。前局に続いて「携帯中継」が入っているのも、その仮定を裏付けるものである。
つまり本局、中尾五段は「勝てば順位戦復帰、負ければ引退」と私は見る。
かつて大山康晴十五世名人は、負ければA級陥落、の一局を指す時、「これは降級の一戦ではなく、勝てばA級昇級のつもり」で指した。それで快勝したのである。
中尾五段も、勝つイメージだけ考えて指せばよい。負けたら引退、などと考えたら手が伸びず、負ける。自分の持てる力を100%出せば、絶対に勝てると思う。
本局、本当はAbemaTVでも中継してもらいたいところなのだが、あちらは今日も藤井六段だ。
まあよい、ヘタに中継が増えて中尾五段が舞い上がっても、かえってヤブヘビである。
私はまだ無職なので、今日は巨大掲示板で状況を窺う。中尾先生、頑張ってください。
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藤原七段の順位戦復帰の目も考える・3

2018-03-21 02:25:11 | 目を考える
藤原直哉七段は昨年3月に順位戦C級2組からフリークラスに降級した。しかしフリークラス1年目の今年度はよく勝ち、3月19日の時点で17勝11敗。
順位戦復帰の条件はいくつかあるが、現在の藤原七段に最も近いのは、
「年度に『参加棋戦数+8』勝以上の成績を挙げ、勝率6割以上」
である。藤原七段は順位戦を除く7タイトル戦に、朝日杯将棋オープン戦、NHK杯、銀河戦と合計10棋戦に参戦したので、「18勝12敗」という数字になる。すなわち、今月中にあと1勝すればよい。
残す対局は、第44期棋王戦予選2回戦・畠山鎮七段。それが20日に行われたが、藤原七段は残念ながら負けた。

4月11日 第67期王将戦一次予選2回戦 ●澤田真吾六段
5月11日 第30期竜王ランキング戦6組昇級者決定戦1回戦 ○豊川孝弘七段
6月5日 第30期竜王ランキング戦6組昇級者決定戦2回戦 ○浦野真彦八段
6月21日 第3期叡王戦予選1回戦 ○高田尚平七段
6月21日 第3期叡王戦予選2回戦 ○堀口一史座七段
7月6日 第30期竜王ランキング戦6組昇級者決定戦3回戦 ○小倉久史七段
7月12日 第89期棋聖戦一次予選1回戦 ○小林健二九段
7月27日 第89期棋聖戦一次予選2回戦 ●西川和宏六段
7月30日 第26回銀河戦予選1回戦 ○東和男八段
7月30日 第26回銀河戦予選決勝 ○北浜健介八段
8月21日 第30期竜王ランキング戦6組昇級者決定戦4回戦 ○神崎健二八段
8月24日 第11回朝日杯将棋オープン戦一次予選1回戦 ○伊奈祐介六段
8月24日 第11回朝日杯将棋オープン戦一次予選2回戦 ○阿部隆八段
8月31日 第59期王位戦予選1回戦 ○東和男八段
9月5日 第3期叡王戦予選3回戦 ●小林裕士七段
9月12日 第26回銀河戦本戦トーナメント1回戦 ○上田初美女流三段
9月12日 第26回銀河戦本戦トーナメント2回戦 ●渡辺正和五段
9月15日 第11回 朝日杯将棋オープン戦一次予選3回戦 ●宮本広志五段
9月20日 第66期王座戦一次予選1回戦 ○伊藤博文七段
9月26日 第59期王位戦予選2回戦 ●都成竜馬四段
10月11日 第30期竜王ランキング戦6組昇級者決定戦5回戦 ●脇謙二八段
10月17日 第66期王座戦一次予選2回戦 ○今泉健司四段
12月21日 第66期王座戦一次予選3回戦 ●大橋貴洸四段
1月16日 第44期棋王戦予選1回戦 ○伊藤博文七段
1月25日 第31期竜王ランキング戦6組1回戦 ○島本亮五段
1月31日 第68期王将戦一次予選1回戦 ●大橋貴洸四段
2月19日? 第68回NHK杯テレビ将棋トーナメント予選1回戦 ●
2月23日 第31期竜王ランキング戦6組2回戦 ●久保田貴洋アマ
3月20日 第44期棋王戦予選2回戦 ●畠山鎮七段
以上、17勝12敗。

こうしてみると、フリークラス脱出はむずかしいと改めて思う。
新年度から12勝2敗と好調なスタートを切ったのに、その後は勝ったり負けたりで、17勝8敗。
ここで「マジック1」となったのに、そこから痛恨の4連敗で、冒頭の条件をクリアできなかった。
いや正確には竜王戦6組の昇級者決定戦があるが、このトーナメント表すら発表されていない現在、来週中に藤原戦が組まれる可能性はない。
残る復帰の可能性は、
「良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上」
となるが、昨年4月11日の澤田六段戦はカットされるものの、11敗だと21勝(.656)が必要となり、あと4連勝が求められる。これはちょっと、順位戦復帰が困難になってしまった。
もう一度書く。
フリークラス脱出は本当にむずかしい。
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3月31日(土)の大野教室に、飯野愛女流1級が登場!!

2018-03-20 00:12:31 | 女流棋士の指導対局会
「大野教室」(埼玉県川口市)では、3月31日(土)に飯野愛女流1級の指導対局会を行います。
飯野女流1級は現在NHK杯将棋トーナメントの棋譜読み上げを務めており、人気女流棋士のひとりです。今年度は好調で、規定の成績をクリアしたことにより、来年度の女流初段昇段が確定しました。
指導対局の定員は6面指し×3コマです。すでに午後の部の2コマは満席になりましたが、午前の1コマ目(11時00分~12時30分)は、まだ空きがあります。
料金は一般・4.000円です。年度末の慌ただしい時期ですが、この機会に対局を検討されてはいかがでしょうか。詳しくはこちらをご覧ください。
当日は私も飯野先生に教えていただきます。
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第17回・私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキングトップ10<改訂版>

2018-03-19 00:17:51 | 女流棋士ファンランキング
日付が変わってしまったが、昨日3月18日は、私の誕生日。またひとつ歳を取ってしまった。あーもう、あ~もう、気が狂いそうである。

当ブログでは2月11日に「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキングトップ10」の第17回を発表したが、その後トップ10入りしていた女流棋士が相次いで結婚してしまった。
そこで今日は4年半ぶりに、<改訂版>を発表しようと思う。

<第17回>
第1位 室谷由紀女流二段
第1位 渡部 愛女流二段
第3位 飯野 愛女流1級
第4位 中村桃子女流初段
第5位 武富礼衣女流2級
第6位 宮宗紫野女流初段
第7位 中倉宏美女流二段
第8位 藤田 綾女流二段
第9位 和田あき女流初段
第10位 中村真梨花女流三段

<改訂版>
第1位 渡部 愛女流二段
第2位 飯野 愛女流1級
第3位 中村桃子女流初段
第4位 武富礼衣女流初段
第5位 宮宗紫野女流初段
第6位 中倉宏美女流二段
第7位 和田あき女流初段
第8位 中村真梨花女流三段
第9位 山口恵梨子女流二段
第10位 香川愛生女流三段

第8回(2013年2月)から第1位を続けていた谷口(室谷)由紀女流二段を、涙ながらに圏外とした。これで、第15回から続いていた渡部女流二段との同率1位も解消され、分かりやすくはなった。
そしてこの結果、1位と2位は「愛」となった。
藤田女流二段は、いったんは10位にしたが、熟慮の末、香川女流三段と入れ替えた。3人目の「愛」である。
4位の武富女流初段はかわいらしいと思うのだが、日本将棋連盟の画像でしか確認していないので、若干の認識不足がある。4位は上すぎの気もするが、まあいいでしょう。
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神谷八段の詰み逃し

2018-03-18 00:20:45 | 将棋雑考
第76期C級2組順位戦の最終10回戦が、15日(木)に行われた。
ここまで藤井聡太六段が全勝で昇級を決めており、残る昇級枠は「2」。都成竜馬四段と増田康宏五段が7勝2敗で自力だった。
増田五段の相手は神谷広志八段(4勝5敗)。神谷八段は1981年の今日(3月18日)、四段昇段。いわゆる「花の昭和55年組」のひとりで、1987年には公式戦28連勝を記録した。
神谷八段は将棋ペンクラブのイベントにもたびたび顔を見せてくれ、歯に衣着せぬコメントと庶民的なキャラクターで、ファンになった会員も多かった。
私も何度か話をさせていただいたが、28連勝の偉業を振ると、当人は「そんなこともあったね」ととうに忘却しており、そのサッパリとした気性も魅力のひとつだと思った。
その28連勝が再び脚光を浴びたのは、藤井四段が連勝街道を走り始めてからである。そして藤井四段が29連勝を達成した時は「凡人が作った記録を天才が抜いたのはとてもいいこと」のコメントを残し、神谷株は全国的に上がったのだった。
さて対局である。増田五段には「もう矢倉は終わりました」「詰将棋は、意味ないです」など、一部将棋ファンをカチンとさせる発言があり、そんなわけで私は、神谷八段をより応援した。
当日は携帯中継があったが、私は契約していないので、局面は見られない。ネットの巨大掲示板を時折見るだけだった。
将棋は増田五段の優位に進んでいたようだが、深夜に千日手成立。なんだか先日の中尾敏之五段-牧野光則五段戦(竜王戦6組)のような様相を呈してきた。
指し直しになったが、私が無職で夜更かしが利くとはいえ、局面が分からないのでは、掲示板を読んだって興味半減である。私は根負けして眠ったのだった。

翌朝起床すると、神谷八段が負けたようだった。増田五段、うれしい昇級である。
だが掲示板を読み込んでいくと、どうも様子がおかしい。最終盤、増田玉に詰みがあったのを、神谷八段が「詰ましに行かず」投了してしまったというのだ。詰ましに行って間違えた、ということはままあるが、詰まさずに投了とは、どういうことだろう。
私はネットからその局面を拾う。それが下の局面だった。

ネットでは20数手詰め云々と書いてあったからもっと複雑な局面を想像していたが、これは割とシンプルである。
投了したらすべてが終わるのだから、生き延びるには王手を掛けるしかない。
まずは△6九飛成。▲同玉には6七にも利かして、本能的に△5八銀と打つ(△5八銀では△7八銀のほうが結果的に2手早くなるのだが、と金につなげて打つ△5八銀が自然である)。▲7九玉には△7八金。王手を続けるにはこの一手だ。
そして▲7八同玉に△6七銀成(第1図)がちょっとした手筋で、▲同玉は△5六角以下簡単。神谷八段はこの筋をうっかりした、という見方があった。

よって先手はこの成銀を取れず、▲8八玉と逃げる。とはいえこの銀が二段活用できたのは大きい。以下△7九角▲9八玉に△9六香(第2図)が痛打だ。

先手は9七にアイシャする一手だが、これは詰み筋に入った感がある。
まず▲9七金(飛)は、△同香成▲同桂△8八金(第3図)(飛)▲同銀△同角成▲同玉△7八金▲9八玉△8九銀まで詰み。

よって第2図では▲9七角と受けるが、これも△同香成▲同桂△8八金▲同銀△同角成▲同玉△7七銀(第4図)▲9八玉△8九角▲同玉△7八成銀▲9八玉△8八成銀(第5図)まで、ピッタリ詰みとなる。△6九飛成から数えて、25手(最短は23手)詰である。


この手順、「詰みあり」と言われれば、プロなら瞬時に詰ます。手順は長いが、むずかしいところはない。
ただ実戦では詰みの有無が分からないから、格段に難易度が高くなる。先日の順位戦B級1組でも、時間に追われた阿久津主税八段が3手詰を逃したものだ。
話を戻すが、不詰みと判断した場合、
A.ある程度まで王手して投げる
B.何も指さすに投げる
に分かれる。
私はどちらかというとBなのだが、そもそも苦しい将棋を指すのが嫌いなので、早投げをすることがままある。ただその判断にスッポ抜けがあるため、女流棋士との指導対局では、投げた局面が私の優勢だったこともしばしばあった。詰んでいた局面もあったくらいである。
神谷八段もBだったから投げたのだが本局、投げるには惜しい局面である。詰みが読めないまでも、王手をしたくなる形ではないか。
それに本局は秒読みにせかされていた。この数手前から負けを自分に言い聞かせていたなら別だが、そうでなければ、パッと目につく手を指しそうなものである。
しかもこれ、指していくうちに詰み筋が見えてきそうである。投了図では見えなかった?△6七銀成も、▲7八同玉の局面を見れば浮かんできそうだ。
私が1月に中村真梨花女流三段に教わった時もまさに同じ状況で、上手の応手を見るうち、詰み筋に到達したのだ。
だがここまでは机上の意見で、実際は疲労度の問題がある。
私はクリアな頭で考えているからいいが、当人は朝の10時から戦って、1局目は深夜の千日手、本局はその指し直しである。
しかも形勢は、恐らく神谷八段がずうっと悪かったのだろう。それが終盤の折衝で、ほんの一瞬だけ体が入れ替わった。勝敗が逆転したのだ。だが疲労困憊の神谷八段は、それがアンテナに引っ掛からなかった。
さらに付け加えれば、相手の増田五段は新人王戦2連覇の実力者である。後手玉に必至を掛けて悠然としている彼の姿を見れば、それを信用して先手玉に詰みなし、と考えても不思議ではない。
内藤國雄九段はかつて「結局、優勢な時間が長かったほうが最後は勝つ」と看破した。投了の局面は夜中の2時とかそのくらいだったはずで、負けを覚悟している齢56の中年棋士に、そこから手を進めろ、というのも酷な話だったのだ。
ただもし本局、神谷八段が降級のかかった一戦だったら、投了図で未練がましく、△6九飛成と指しただろう。してみるとわずかに、神谷八段に勝利への執念が薄かったと言わざるを得ない。
いずれにしても、相手玉に詰みがあったのに投了し、相手が昇級したなんていうケースは初めてだろう。将棋界は今年度、というか今年に限ってもフィクションのような出来事が次々と起こっているが、この巡り合わせは何なのだろう。
なお他の対局は、都成四段は見事勝利し昇級。増田五段の昇級によって、同じ8勝2敗で頭ハネを食らったのが石井健太郎五段となった。私は石井五段にも指導対局を受けたことがあり応援していたのだが、今回は運がなかった。

さてこんなわけで、今年度もドラマチックな最終戦だったわけだが、ワイドショーは藤井六段の「順位戦10戦全勝」「今年度公式戦60勝」「記録部門4冠」のほうを取り上げた。
後ろの2つはともかく、「藤井六段の順位戦最終戦」は消化試合だった。ワイドショーが「神谷-増田戦」の顛末を普通に取り上げるようになれば、将棋もいよいよメジャー競技の仲間入りとなるのだが、そんな日は来るだろうか。
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