付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「<蒼橋>義勇軍、出撃!~銀河乞食軍団 黎明篇1」 鷹見一幸

2009-07-08 | ミリタリーSF・未来戦記
「野郎ども、蒼橋一世一代の大仕事だ。いいか、仕事ってのは適当にやっていい加減に仕上げるもんだ、分かってるな」
 正しい意味で理解して欲しい、開戦にあたっての義勇軍司令長官、滝乃屋仁左衛門の檄。

 野田昌宏のスペースオペラ『銀河乞食軍団』はじまりの物語を、野田昌宏自身の原案に基づいて鷹見一幸が書き上げたもの。没後企画ではなく、存命中にスタートしていたのですね。表紙が加藤直之でなくなったのは残念だけれど、鷹見一幸+ラノベ風のイラストに惹かれて手に取った人が本編も読んでくれることを期待します。

 東銀河系南東部の辺境で、小さな紛争が起きようとしていた。
 〈紅天〉星系資本により開発された自治星系〈蒼橋〉が、〈紅天〉の圧政に耐えかね、ついに完全独立を訴えて蜂起したのだ。放置しておけば、不平等条約によって軍備すら制限されている〈蒼橋〉に勝機はないと思われたが、それを見逃すことは政治的に不安定な〈紅天〉が豊富な鉱物資源を背景に連邦内での勢力を強化することにつながる。そこで、政治的安定を優先する連邦艦隊は、ムックホッファ准将が率いる艦隊を派遣するのだが……。

 ムックホッファ准将が連邦艦隊を辞めるまでの話の〈銀河乞食軍団〉誕生秘話だとか。なんとなく蒼橋動乱の話で続きそうに思っていましたが、最終的にジェリコ・ムックホッファは中将にまで辿り着き<星海>星系基地司令官になるはずなので、そうなるとA・B・チャンドラーの銀河辺境シリーズみたいな展開になるのでしょうか。
 定評のある長編シリーズをスタッフ一新で前史から描くというと、ちょうど公開中の『スタートレック』劇場版みたいです。スタッフが違うからやはり違うところは違うのだけれど、基本のポイントは押さえてあるので新作としても続きとしても愉しめますね。この巻はミリタリーテイストがやや強め。それもムックホッファ准将の第108任務部隊ではなく、採鉱師や宇宙鳶らで構成された義勇軍の奮戦が中心。そこに星湖トリビューン特派員の新米特派員ロイス・クレインや連邦宇宙軍機関大尉・熊倉松五郎らが飛び込んで……という話。
 現場の汗と油で真っ黒になっていそうな空気がうまいこと野田節を再現できている気がします。もうちょっとガラが悪い方が野田昌宏っぽい気もしますけど、そこは鷹見テイスト。銀河乞食軍団前史というだけでなく、独立したスペースオペラとして面白かったです。

【<蒼橋>義勇軍、出撃!】【銀河乞食軍団 黎明篇】【鷹見一幸】【野田昌宏】【鷲尾直広】【碁盤】【小惑星帯】【天邪鬼】
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「新人類戦線~“失われた十支族”禁断の系譜」 今野敏

2009-07-08 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「私は信ずるべきものは自分で選ぶ。自分の人生を他人に捧げてしまうほど愚かではないつもりだ」
 元ドイツ空軍少佐ヘルムート・ウルブリヒトの言葉。ドイツ空軍からイギリス軍、そしてネオナチスと転々とした男は結局、軍人に向いていなかったのだ。

 買い始めてしまったものの、途中で出版社は変わるし、タイトルは変わるし、通し番号すらついていないしと、本当に同じシリーズなのか、抜けはないか、最後の最後まで気が抜けなかったのが今野敏の新人類戦線シリーズ。今もタイトルを変えた改題版の刊行が続いていて、1冊目刊行後20年以上かけて新書から文庫へと点々とし、その間にシリーズ名も「新人類戦線」から「封印の血脈」(学研M文庫)、「特殊防諜班」(講談社文庫)へと変わってます。たぶん全7巻。根強い人気はあるみたいです。

 第一空挺団普通科所属の一等陸尉だった真田武男はいきなり組織から放り出された。高い能力持ちながら単独行動を好む真田は正規の組織に居場所はなかったのだ。
 彼に与えられた新たな所属は自衛隊陸幕第2部別室「特殊防謀班」。そのただ1人のメンバーとなった真田に与えられた最初の任務は日本各地で相次ぐ新興宗教団体の教主や拝み屋が誘拐されるという事件の調査だった。
 だが、この奇妙な事件こそ、ヒットラーの遺した負の遺産「新人類委員会」による遥か古代から受け継がれた血の伝承を狙う巨大な陰謀だったのだ!

 女王陛下の007ならぬ「総理大臣の特殊防謀班」。ユダヤの“失われた十支族”の血脈は古代日本に受け継がれており、それをヒトラーの残した秘密組織が狙うという、トンデモ陰謀系スーパー伝奇アクション(超能力女子高生付)
 ちょうど菊地秀行の闇ガードとか“念法使い”工藤明彦シリーズを読んでいた頃なので、そっち方面を期待していたけれど敵はけっこう真っ当です。みんな傭兵とかテロリストで、弾丸で頭を吹き飛ばされたら死ぬような連中ばかりでした。ハリアーは手強かったけど……。
 そもそも、主人公からして優秀な成績ではあるけれど普通の人間でしたしね……というあたりで、超人的なキャラばかりの話を読みすぎだと自覚しました。

『新人類戦線~“失われた十支族”禁断の系譜』広済堂ブルー・ブックス
『聖卍(スワスティカ)コネクション』広済堂ブルー・ブックス
『ユダヤ・プロトコルの標的~新人類戦線シリーズ』広済堂ブルー・ブックス
『過去(シュパンダウ)からの挑戦者~新人類戦線シリーズ』天山ノベルス
『失われた神々の戦士~新人類戦線シリーズ』天山ノベルス
『黒い翼の侵入者~新人類戦線シリーズ』天山ノベルス
『千年王国の聖戦士(メシア)~新人類戦線シリーズ』天山ノベルス

 広済堂版はだんだん飲み屋のチーママとチンピラ風の表紙になっていますが、天山版になって一気に若返りました。人間レーダーサイトと化した少女・芳賀恵理がどこか富田靖子っぽいよね。

【新人類戦線】【失われた十支族】【禁断の系譜】【今野敏】【ハル・マジェドン】【山の民】【ルドルフ・ヘス】【聖拳】【ハリアーII】
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