付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「街の灯」 北村薫

2009-07-28 | ミステリー・推理小説
 北村薫がベッキーさんシリーズの『鷺と雪』で第141回直木賞を受賞しましたが、わたしの周りでは「やっと受賞。遅すぎる」「審査員は見目がない」と言いたい放題。それくらい「北村薫の作品は直木賞くらい当然」という感覚でしたが、そのベッキーさんシリーズの1作目。

「当たり前のことがいえなければ、生きていても仕方がないでしょう」
 女性運転手別宮みつ子の言葉。

 花村家は華族でこそないものの士族出身の裕福な一族。その令嬢である英子専属の運転手として新たに連れてこられたのは女性運転手の別宮みつ子。たまたまサッカレーの『虚栄の市』を読んでいたことから、英子はそのヒロインにちなんで彼女をベッキーさんと呼ぶのだが……。

 昭和7年の東京を舞台に、上流家庭のお嬢様を主人公にさまざまな事件の謎について語る作品集で、新聞記事から変死事件を推理する「虚栄の市」、英子の兄に届けられた暗号の謎を解く「銀座八丁」、軽井沢の別荘での起こった事件の真相を指摘する「街の灯」の3本を収録。そうです。ベッキーさんは探偵役ではないのです。でも、単なるワトソン役でもなければ2人で1人といった名探偵でもないし、ただの運転手でもありません。自分がいちばん似ているなと感じるのは、サタースウェイト氏とハーリ・クィン氏の関係でしょうか。傍観者と触媒ですね。あれに近い気がします。

【街の灯】【北村薫】【チャップリン】【鬼押出】【服部時計店】【江戸川乱歩】
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「人間以上」 シオドア・スタージョン

2009-07-28 | 超能力・超人・サイボーグ
「倫理なんてものは、調べられる事実じゃない。考え方なんだ」
 ヒップ・バロウズの言葉。

 彼らは年齢も人種も性別もさまざまだったけれど、白痴であり発育不良であり言語障害であり社会に溶け込めず阻害されている者たちだった。
 けれども彼ら5人が出会ったとき、彼らは新たな人類、集合人としてテレパシーやテレポテーションなどの超能力を開花させ始めるのだが……。

 「あらゆるものの9割はクズである」というスタージョンの法則でお馴染みスタージョンの超能力ミュータント・テーマの代表作。古典的なテーマを敬遠して長く手に取りませんでしたが(旧版は表紙イラストが怖いんだ…)、緒方剛志のイラストになったのを機会に購入。
 外部とのコミュニケーションをとれない小グループが世界を一変させるほどの力を手に入れてしまったらどうなるか、どうするべきかという話ですね。誰が主人公かよく解らないまま終盤に突入してしまって、最後になってようやく「主人公も集合人だったんだ」と納得しました。
 
【人間以上】【シオドア・スタージョン】【緒方剛志】【集団人】【品性】【新人類】【超能力】
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