付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「鋼鉄の騎士」 藤田宜永

2009-07-24 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「貴族の長所は、とんでもないことを考えつき、それを実行に移すことだと思っていたが、君はまさに、その典型だな」
 パリ在住の日本人、高石三郎の言葉。

「貴族の美徳は、金を浪費することだよ」
 貴族は人が滑稽に思ったり脅威を感じることに散在するのが仕事であり、損得勘定で動くのは単なるブルジョワだと語るド・トゥルニエ男爵の言葉。

 貴族が科学を発達させ芸術を振興させたのかもしれません。
 モーター・スポーツに身を投じた日本人青年が巻き込まれる波瀾万丈の冒険と国家間の陰謀劇。

 左翼運動に挫折した子爵家の次男・千代延義正は、帝国陸軍フランス駐在武官の父に引きずられるように日本を離れた。そして出会った1936年トリポリでのグラン・プリ・レースに心を奪われた義正は勘当されながらもカー・レーサーを目指す。
 だが、心ならずもドイツとソ連間の諜報戦のまっただ中に陥り、さまざまな組織から狙われることになってしまう……。

 厚さ3センチの上下巻にいきなり及び腰。こんな分厚い文庫を本当に読み切れるかなとおそるおそる上巻だけ買ってみたところ、意外に読みやすくてするすると750頁ちょいを読んでしまったのにはびっくり。
 トリポリ優勝直後にレース界から消えたレーサー、ベルニーニはどこにいるのか? ドイツの誇る天才レーサー・シュミットと女性科学者の運命は? 怪盗<弓王子>はこの諜報戦にどう絡んでくるのか? そして、パリの街に消えた恭子の運命は……?と上巻はレースよりも諜報戦でさまざまな人物が入り乱れてパリを右往左往している感じです。
 スパイの世界は非情というより疑心暗鬼の世界だなあと思います。上巻ではかろうじてレース初勝利まで。さあ、下巻をどこからか工面してこよう……。(09/07/21)



 結局、下巻分は500円の中古で最初の新潮社版ハードカバー1巻本を買ってしまいました。著者に印税が入らないから新刊で手に入るものは出来る限り新刊で買ってますが、今月はそろそろ金穴。上巻は新刊で買ったということで勘弁してください。(20/07/24)

【鋼鉄の騎士】【藤田宜永】【S】【ブガッティT55】【反ボリシェビキ】【金粉ショー】【秘密警察】【マフィア】【ナチス】
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「Encyclopedia of Things That Never Were」

2009-07-24 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 確かこの本について知ったのは、『ゲームグラフィック』誌のブックレビューだったんじゃないかと思います。当時は日本語版アマゾンなんか微塵も無いから大型書店に注文して半年待ちだったんじゃないかな。ぜんぜん連絡が無くて、ふらりと寄った店のカウンター奥に巨大な緑背のハードカバーがゴロリ。まさか、こんな本を注文するやつが地方都市に何人もいるとは思えなかったので、確認したらまさしくそうだったという顛末。
 電話連絡があったのかなかったのか、当時は下宿で電話も呼出だったから、何ヶ月か放置されていた可能性もあり。あぶない、あぶない。注文品でも、連絡してなかなか取りに来ず、それを欲しいという人間がいたらあっさり横流しされる時代でしたもの。

 現実には存在しないものの百科事典というタイトルそのままに、各国の神話から文学までを対象に、神々や妖精、土地や乗り物まで想像と幻想の産物をイングペンのイラストとページの文章でまとめた1冊。

 ファンタジーのすべてを網羅したと豪語するだけあって、なんでもかんでもとりあげているので、ひとつひとつはそんなに詳しくはありません。神話の神々にしても代表的なものくらいでしょうか。
 それでもかなりの大著なので、とにかく範囲が広いのです。ギリシア神話の神々があれば幽霊Uボートやメイルシュトロームあり、アボリジニの神話からリリパット、白鯨、アーサー王伝説までを網羅し、それらに美麗にして細密なカラーイラストが付くのですから文句のつけようがありません。いつまでも、何回でも、眺めて読んでいられる事典です。
 4年後に教育社から『想像と幻想の不思議な世界~エンサイクロペディア・ファンタジア 』という、解りやすいと言えば解りやすく野暮と言えば野暮なタイトルで日本語版が刊行。日本編で風神雷神なども追加されているというので泣く泣くまた7000円ほどを支払って購入。学生に1万円近い出費は痛いですが、まあ、それだけの価値はありました。今でも美本が5000円以下で手に入るなら買いだと思います。

【Encyclopedia of Things That Never Were】【マイケル・ページ】【ロバート・イングペン】【ロープ魔術】【ジョニー・アップルシード】【イグドラシル】
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「機動内親王 澪子様の冒険2~女皇の帝国外伝」 吉田親司

2009-07-24 | 架空戦記・仮想戦史
「私はトップにはなれない。金メダルは取れない。でも二番手には二番手の戦い方があると思う」
 駒条宮澪子様の言葉。

 フランスの大地を疾駆するランチア・アストゥーラは一路ルクセンブルクへ。しかしその行く手に立ちふさがるのはヴィシー政権下に配備された対空戦車シャールB1改。さらにローザ率いるチーム・カサノヴァがテロリストの本領を発揮して迫り来る。
 果たして内親王澪子様は銀盤の秘密を持ち帰ることができるのだろうか!?

 『機動内親王 澪子様の冒険』もこれにて完結し本編へと続くことになります。
 もう少し好き勝手やっても良かったんじゃないかと思う反面、もう十分好き勝手やってた気もしますが、このエピソードならもうちょっとぎゅっと圧縮して1巻本にして、代わりに開戦後のエピソードでもう1冊を期待しても良かったかなと思います。
 最後の最後でザルなのは、真澄やハツが悪いと思います。油断しすぎです。 

【機動内親王 澪子様の冒険2】【女皇の帝国外伝】【吉田親司】【冨沢和雄】【鷲尾直広】【オードリー】【ナコ・シスターズ】【スピットファイア】【救急車】【カプリコン1】【チューリング】
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