付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「マリア様がみてる/フレーム オブ マインド」 今野緒雪 28

2009-07-15 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「完敗ってかなり清々しいものなのよね」
 自分の考え違いに気づかされた立浪繭の言葉。

 バレンタインの宝捜し企画の直後。写真部の部室から追い出されて教室で写真の整理をしている蔦子と出会った祐巳は、薔薇の館で作業をすればいいよと誘いをかけるが……という『フレーム オブ マインド』
を軸に、蔦子や祐巳が見始める写真の中からさまざまな姉妹たちの喜怒哀楽が浮かび上がり挿入される短編集。
 事故に遭い10ヶ月眠り続けていた少女が再び登校した学校で感じる不思議な既視感と少女たちの友情を描く『四月のデジャブ』。
 余所の姉妹にちょっかいかけては破局させていた立浪繭が価値あるものを突きつけられる『三つ葉のクローバー』は黄薔薇革命の後日譚の1つで、最初のバレンタインデーイベントでの裏話。
 江利子をライバル視していた内藤姉が主役の『枯れ木に芽吹き』。内藤姉にはすごく親近感を抱いていたので、こういう形で救いが与えられると嬉しいです。
 江利子と令の出会いを描いた『黄色い糸』。いかにも江利子らしい話でした。最初の出会いがこういう形なら、そりゃあ元気になった由乃をいじめたくなるのも解ります。
 とても痛い話だけれど、こういう話は案外とありふれた事だと思う『不器用姫』。簡単に弱者と強者は入れ替わるんです。あえていうなら、みんな不器用な話です。
 祐巳が忘れていた可南子の出会い『光のつぼみ』。見る人が代わればこんな風に見えるんだよという話。タイトルからして「え~っ!?」ではないかと思います。「一編の詩のよう」に美しい……って誰?
 いつも誰かが世話をしている謎の温室の物語『温室の妖精』はちょっと学園奇譚っぽい話。話としてはいちばん好きだけれど、実際にこういう会話をしている光景をのぞき見したらかなり引いてしまいます。きっと。
 夜の学校で肝試しをしていた少女が遭遇するもう1人の自分『ドッペルかいだん』は、じっくり考えると真相らしきものに辿り着いて「え~っ!?」となる話。
 そして妹の方の内藤さんの物語『A Roll of Film』の10編を収録。

 スケッチ程度の話ではなく、起承転結がきちんとしていてバリエーションも豊富で、短編集としてじっくり愉しめる巻です。個人的には読んでいると70年代の萩尾望都の絵が脳裏に浮かんできます。

【マリア様がみてる】【フレーム オブ マインド】【今野緒雪】【デジャブ】【肝試し】【卒業記念】【温室】【妖精】【ホームズ】【ドッペルゲンガー】
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「女子と鉄道」 酒井順子

2009-07-15 | エッセー・人文・科学
 女性向きの和のお稽古事といえば茶道、華道、香道。でも、これに鉄道が加わってもいいんじゃない?と鉄道マニアになりきれない著者が、好きで乗って周り、見て回った鉄道の話あれこれ。
 こういう鉄道本は特定の傾向に固まりがちなんだけれど、駅名は覚えられない、列車の形式なんかにも興味ない、駅弁は好きじゃないし、列車に乗ったらすぐに寝てしまう……そんな鉄道マニアにあるまじき著者だからこそ自由気ままに乗って回ります。英国鉄道や廃止が決まった夜行列車に乗ってみたかと思うとただ山手線を一周してみたり、大学の鉄道研究会や鉄道模型バーを覗いてみたりとあれもこれもと盛りだくさん。難しい話は抜きにして、単に鉄道に乗るのが好きでも良いじゃない?という1冊。(09/07/15)

 ……で、表紙の雰囲気が余りにも違っていたため、つい間違って単行本も購入してしまい、読んで気がつく失態を演じてしまう……。(10/02/07)

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