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本書は、ライブドア事件真っ盛りの2005年ごろに出た本だ。
その後M&Aブームも下火になったので、積読になっていた。
今になって読んでみたのだが、3年という月日が、全く本書の価値を変えた。
M&Aの実務書から、一旦は過去の遺物となっているM&Aがどういうものだったかという歴史書へだ。
各論は、今でも恐ろしいほど正しい。その数学的論理性、法律解釈の先端性でも、最先端の論理をわかりやすく説明してある。
でも結論は、まったく違った。
本書の結論は、2000年代後半の日本がLBOブームになるだろうという予測だ。理由として、①M&Aはすでに増加してきており、M&Aへの抵抗感が薄れていること。②敵対的買収が特別なものではなくなっていること。③M&Aのための、ノンリコースローンが供給される環境が整ったこと。④エクィティ資金の供給が盛んになっていること等が理由にあげられている。
もちろん、これから10年後どうなっているかは誰もわからないのだが、少なくとも本書が著されてから、3年後の今においては、まったく正反対の状況になっている。
日本人のセンチメントは、まったく変わらなかったし、マーケットの急変により、M&Aを実行するための資金供給も見事に途絶えた。
これは、サブプライム問題以降の世の中の変化と表裏一体だ。2000年代前半には、大きく世の中が変わっていくと思われたのだが、結局、各国のカルチャーが変わることはなかったし、マーケット環境が変わると、金融の対応もまったく元に戻ってしまった。
各国の歴史、文化の重さと、マーケットの力の大きさを、過小評価してはいけないという教訓だ。