本書は、去年の6月に出た本だが、出た時には気づかず、最近の新聞広告で見つけて、早速GET。
テーマもさることながら、昔シカゴ駐在時代に、唯一郵送配達をやっていた読売新聞の”巨大遺跡を行く”シリーズ連載に影響を受けたことも理由の一つだ。
本書は、読売の連載をまとめた本。
正倉院御物の起源を、実際に、シルクロード各地を訪れ、探っていくドキュメンタリーで、テーマとしては、新しくないし、専門家によるルポでもないから、深みも凄いという訳ではない。
しかし、刻刻と変わっていくシルクロードの今を切り取るという意味だけでも価値があるし、素人が普段行きにくいところの訪問記もあるので、面白かった。
正倉院宝物の中でも最も有名と言っていい五弦琵琶。イラン起源の琵琶は、四弦で、印度起源の琵琶は五弦。しかし、五弦琵琶の現物は、この世で正倉院のものしか残っておらず、その絵もキジル洞窟にしかないと思っていたら、何と、アジャンタ遺跡の壁画と彫刻に5カ所も見つけたという。
しかも、あの壁画の中でも最も有名な菩薩像の肩の後ろで、キンナラが奏でる琵琶は何と五弦琵琶なのだという。あんなにじっくり見たつもりだったのに、気づかなかった。
自分のとった写真で確認しようとしたが、鮮明でなくはっきり確認は、できなかったが。
足利義政や織田信長が、切り取った後もあることで有名ないい香りのする木である沈香(じんこう)は、ラオスとベトナムの国境付近で栽培されているという。自然のものもまだ奥地に行けば見つかるそうで、1kg当たり5千万円もするそうだ。見つけて大金持ちになったベトナム人もいるという。
そんなこんなで、興味深い話がてんこ盛り。正倉院展への興味も、さらに増した。