CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】帰ってきたヒトラー

2014-03-31 21:59:55 | 読書感想文とか読み物レビウー
帰ってきたヒトラー  作:ティムール・ヴェルメシュ

面白い小説でありました
翻訳もよかったといったらいいのか、
すんなり入ってきて、
よどみなく我が総統<マインフューラー>の演説を流し、
読むスピードがどんどん速くなっていくようで、
楽しい読書体験でありました
海外原作もので、こんだけ読みやすかったのは
初めてかもしれない、そう思うほどでありました

ただ、翻訳の印象としまして、
「お笑い芸人」という単語が出てきて、
これは、いわゆる「コメディアン」というのの訳なのか、
あるいは海外の何かそういう特有の職業、
日本でいうところのお笑いタレント的なポジションながらも、
喜劇役者に近いかのような、
そういうのがいるんだろうかなと、
この言葉についてだけひっかかるというか、
しっくりこなかったのでありました
まぁ、瑣末なことであります
大勢に影響はない

そんなわけで、内容につきましては、
現代のドイツにヒトラーが唐突によみがえり、
いろいろな紆余曲折というか、誤謬につぐ誤謬が続き、
ヒトラーそっくり芸人扱いをされたまま、
政治風刺をする、ブラックユーモアの芸術的お笑いを携えると
まぁ、そんな按配に描かれているのでありました

私のような学では、ヒトラーのそれが、
どのようにどれだけよくないのか、
海外で言われているそれもわからなければ、
自分で考えてもよくわからないという体たらくなので、
ただただ、その皮肉めいた情熱というべきか、
ドイツのためを思う、本当の国粋主義といったらいいか、
極右とはこうあるものだという手本のように、
ぐいぐいとエリート思想のままに生きるというのは
非常に面白いというか、楽しく読めてしまったのであります
ああ、そりゃ人気出たわけだな、
当時はみんな騙されたというか、その気になったんだろう
そんなことを思わされるほど、
なかなか饒舌、そして心高ぶる扇動を見られるのでありました

ストーリーは、少しずつ下積み、出世といった具合に
芸人のサクセスストーリーとしても面白く読めるものの、
やはり、その政治に関する指摘がステキでありまして、
極右かくあるべきという思想のもと、
それがぎりぎりのジョークに変換されていくのは、
非常に面白くて、現世界に生きているにも関わらず、
一つも影響を及ぼさないといっていいのか、
何か、歯車が違えばということになっていくのは、
いろいろと考えさせられてしまうのであります
よく、ドイツで発行できたなこの小説

そんな風に楽しみながら、
ネオナチを論破する総統という
なんというか、きわまったジョークの末のラストは
読後感悪くなく、非常に面白い小説だったと
快哉なのでありました
良作です