下のブログの記載の通り、本日2/23、「第7回築地市場を考える勉強会」が開催されます。
講師のお一人、坂巻先生の資料が上がってまいりました。
勉強会の内容が多いため、事前にお目と押しいただいておくとよいかもしれません。
とても重要な内容です。
****以下、坂巻先生資料****
2010/02/23
「豊洲新市場予定地の汚染物質処理に関する適用実験」について
--考え方と問題点--(メモ)
日本環境学会 土壌汚染問題WG長 坂巻 幸雄
<DZZ03766@nifty.ne.jp>
●「現地実証試験」とは、ある確立された技術を、ある特定のサイトに適用した場合、「果たして実効性があるのかどうか」を確かめるための試験である。
私たちは、都の「技術会議」が、石原知事の言う「専門の学者でも見落としているような優れた新技術を、豊洲汚染地に適用して、汚染除去の効果を挙げる」ためには、選定された「新技術」なるものの詳細な内容の公開と、その技術を適用して経済性・実効性があるかどうかを検証する、現地実証試験を併せて行うことを、一貫して主張してきた。
●しかし、都は、技術会議の公募に際して、応募企業が豊洲の現地を使って実証試験を行うことを一切認めず、その費用も計上しなかった。その理由付けとして都は、
「公募に際して提案事業者に、技術・工法の効果や施工性についての実証データや科学的根拠を明示するよう求めるとともに、新市場予定地の汚染状況・土壌特性を踏まえた内容であることを条件としていることから、実証試験は実施せず、提案内容の記載事項に基づき評価・検証を行う」【応募要項 2.評価の前提事項 (1)実証試験の取り扱い】
と述べている。
これでは、いわばオリンピック選手の選考を、実技の成果によらずに過去の記録とペーパーテストだけで進めるようなもので、客観性・科学性に大きな疑問を残す。「汚染状況・土壌特性」というのも、都のデータ隠蔽によって、不完全なままに終わった「専門家会議」の報告書以上の内容・レベルではない。そこでは、ベンゾ(a)ピレン汚染問題も、残置杭問題も、一切無視されているのである。
●今回都が意図し、日本工営(株)が6億6千万円(税別)で受注した標記の「適用実験」は、現場作業を伴うために一見上記の「現地実証試験」であるかのように見えるが、本質はそうではない。都も、そのために「適用実験」と称して区別をしているが、都の部内でも、これらの用語の使い方や定義にはかなりの混乱が見られる。
●この「適用実験」とは、ある要素技術を現場に適用した場合に、「実効性があること」を確認するための実験であって、「果たして実効性があるかどうか」を客観的に判定する試験ではない。
この委託業務の「特記仕様書」を見ると、実験の帰結として、「汚染濃度低下を確認する」という文言が頻繁に出てくる。すなわち、汚染濃度低下が確認できないような実験結果を出すことは、契約条項の違反となる。例えてみれば、入試問題の正解が、受験生が答を出す前に、解答用紙にすでに書き込んであるのである。
これでは、受託したコンサルタントとしては「低下した」とするデータを得るために最大限の努力をせざるを得ない。このようなプロセスが、厳密で客観的であるべき実験結果を大きくゆがめる危険性は大である。
●加えて、「特記仕様書」では、汚染の程度は従前の分析値が与えられているだけで、今回の実験の基礎データとして、事前の分析を行う仕様にはなっていない。これでは、効果の解析は出来ない。採取資料は低減効果をが見えやすい高汚染濃度の資料が意識的に選ばれていて、技術的には難しい中~低濃度試料はあらかじめ除いてある。
実験手法も、例えばベンゼンの処理装置一つにしても、「既存の装置も既存の装置を改造するもののいずれも可。予定地内に搬入しても、外部で処理することのいずれも可。」
と言うような、試料の汚染やすり替えを防止する管理手法を、全く意識しない仕様があったり、微生物処理方式では菌種、管理温度、栄養塩等の具体的な記述を全く欠いていたりするなど、信じがたい粗雑さが目立つ。実スケールに拡大した場合に当然生じてくる問題点も、この「適用試験」では解明されない。
●さらに、本件契約の成立は10/1/22、中間報告書の提出期限は(恐らく予算審議の日程の考慮から)10/3/9となっていて、その間の実働日数は僅か47日しかない。この短期間で、十分な精度を持った解析的な作業を行うことは不可能である。所詮結果は、あらかじめ用意されている結論に落とし込む以外には、選択の余地がなくなる。
検査方法の企画立案と、精度検定とには、細心の注意を要する。少なくとも仕様の決定と、作業の実施、結果の判定の各段階には、厳密な客観性の担保(例えば、二重盲検法の適用等)が求められるが、今回の都の方針には、それらは一切触れられていない。
●客観性の担保のためには、中立的な評価委員会(都議会が選定に当たるのも一案)の組織と、全経過を通じての公開性の保証が是非とも必要であり、そのことなくして調査と調査結果のみが先行することは許されるべきではない。
これらの配慮を欠いた今回の「適用実験」は、結果がどう出ようとも、そのことを以て安全性が担保されたと見なすことは絶対に出来ない。都は、これまでの諸調査で見られた拙速主義・秘密主義をきっぱりと捨て、真に客観性のあるデータを広く都民に公開して、新市場建設問題は民意の帰趨にゆだねるべきである。
<以上>