(演習2 2014.5.7)
1 全国紙を発行する新聞社の団体(新聞協会)が、購読料を引き上げることを決めた。
ただし、違反した場合の制裁措置はなく、いわゆる紳士協定であった。
一般消費者は、「これは独禁法違反のカルテルである」と訴えたが、公取委は、「相互拘束性がない」として排除措置命令の対象にはしなかった。
この公取委の判断は妥当か。
回答:独禁法8条1号
「相互拘束性」を何でみるか。
ペナルティないから、相互拘束にあらずとの判断。
参照:昭和34年公取委判断
2 ある消費財メーカーと、この製品を取り扱う卸売業者5社とが話し合い、これら卸売業者が小売業者に販売する価格を申し合わせた。
この行為は、「不当な取引制限」に該当するか。
回答:再販カルテル
ひとつのブランドで、一定の取引分野が形成するか。→他の競合があって、形成はしない。「不当な取引制限」に該当しない。
3 A市は建設工事を指名競争入札により発注しており、この入札に参加することのできる建設業者は34社である。
このうち30社が集まり、市から指名を受けた場合は、あらかじめ、指名業者間で受注予定者を決め、受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるよう協力することを申し合わせた。
しかし、4社はこの申し合わせに参加しなかった。
このためこれら4社が指名された入札では、4社以外の指名業者が受注予定者を決めても、この者が確実に受注できる状態ではなかった。
このケースは、「不当な取引制限」といえるか。
また、「一定の取引分野」をどうとらえたらよいか。
回答:一定の取引分野をどうとらえるか
4社指名の場合、談合非成立
4社非指名の場合、談合成立→この場合を、一定取引分野とみれば、不当な取引制限といえる。
逆を言えば、
指名競争入札は、談合が成立しやすい。
一般競争入札が行われるべき理由となっている。
4 甲製品は、国民の生活に欠かせない商品である。
甲製品のメーカーは、輸入する原材料価格が高騰したとして、甲製品を30%値上げすることを決めたが、監督官庁から「値上げ幅が大きすぎる。15%以上の値上げはしないように」との行政指導を受けた。
甲製品のメーカーらは、これを受けて甲製品を15%値上げした。
この行政指導は、違法性阻却理由になるか。
回答:監督官庁による行政指導は、違法性阻却事由になるか。公共の利益(2条6項)にあたるかどうかが問われている。
上限15%までとした行政指導は、違法ではない。
申し合わせて「15%」と相互拘束し値上げしたことは、違法。
参考:石油価格カルテル刑事事件 最判昭和59.2.24判決、テキスト157頁&222頁
以上
(2014.5.7、2014.5.14)