(演習3 2014.5.21/5.28)
1 国内でX商品のすべてを製造販売するABCの3社は、共同で出資し、甲社を設立し、今後は、X商品を直接取引先小売店に販売することはやめて、すべて甲社を通じて販売することとしたが、独禁法に違反するか。
回答:独禁法10条に違反するかが問われている。
10条では、他の会社をもって、一定の取引分野を実質的に制限する場合。
甲社からすべて販売で、甲が価格をコントロールできる。
独禁法に違反し、認められない。
2 X鉄道会社は、Yバス会社の株式の過半を取得するとともに、役員を派遣し、その一人は社長に就任した。この地域には、これら2社の鉄道とバス路線しかなく、競合する業者はいない。
独禁法上違法であるとすれば、どのような排除措置を講ずるべきか。
回答:10条と13条に違反するかが問われている。
一定の取引分野とは、当該地域の旅客運送である。
二以上の事業者が競争することがなくなり、X鉄道会社は、取引条件を支配することとなる。
排除措置は、XがYの経営を支配できなくなるまで持ち株を放出させる(目安は、11条の5%を超える部分)、役員の辞任。
参考:広島電鉄事件
3 2において、X鉄道会社が、「自らYバス会社の株式を取得するのはまずい。自社の社長に株を取得してもらおう」と考えて実行しようとした場合は、独禁法上違法にあたるか。
回答:14条違反。
4 東宝・スバル事件は、東宝が、有楽町にあるスバル座と銀座近くにあるオリオン座の2館を賃借しようとして発生したものである。高裁は、本件の「一定の取引分野」をどのように確定したのか。
回答: 映画しか娯楽のない時代において、一定の取引分野とは、洋画の封切館。全体の3/4を東宝が占めることとなった。
顧客が、どう選ぶかで、市場を決める。
5 日本の自動車メーカーすべてが出資して設立した研究機関において、新しいディーゼルエンジンを開発しようとの計画について、独禁法上どのように評価すべきか。
回答:自社開発をしない=技術の競争をやめようという相互拘束
一定の取引分野:ディーゼルエンジン
公共の利益あり:技術競争をやめようという申し合わせが、形式的に自由競争経済秩序に反するが、当該行為によって守られる利益、技術を集め集中的に開発し、燃費のよいディーゼルエンジンが開発されるという利益が、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進するという独禁法の究極の目的に実質的に反しないと認められる例外的な場合に当たる。
独禁法の違法性が阻却される。
以上
(2014.5.21、2014.5.28)