夕張市の財政再建問題を、見てみます。
****ウィキペディアより****
財政再建問題
財政難に陥った経緯
かつて夕張は炭鉱の街として栄えたが、「石炭から石油へ」のエネルギー政策転換により、次々と炭鉱が閉山されていった。1990年(平成2年)には最後の三菱南大夕張炭鉱が閉山し夕張から炭鉱がなくなった。これにより、炭鉱会社が設置した鉱員向けのインフラを市が買収する。1982年(昭和57年)、北炭が所有していた夕張炭鉱病院を市立病院移管に対して夕張市は40億円を負担している。さらに北炭は、夕張新炭鉱での事故を理由に、鉱産税61億円を未払いのまま撤退(倒産で払えなくなったとも)。また、北炭・三菱は炭鉱住宅5000戸(市営住宅に転換)や上下水道設備などを夕張市に買収してもらい、額は151億円に達した。結果「炭鉱閉山処理対策費」は総額583億円に達した。
また、こうした施設の建設に際して地元業者優先の随意契約が多く行われ、建設費も適正な価格に比べて相当高くついたケースも見られたほか、事業が観光客誘致よりも雇用確保に傾いたため、各施設が余剰人員を多く抱えていたことも観光関連施設の収支を悪化させる要因となった。
市は、中田鉄治元市長時代に石炭産業の撤退と市勢の悪化に対し、「炭鉱から観光へ」とテーマパーク、スキー場の開設、映画祭などのイベントの開催、企業誘致により地域経済の再生、若年層を中心とする人口流出の抑止、雇用創生などを図ったものが振るわず、逆に観光・レクリエーション関係の衰退期または観光・レクリエーション関係環境に恵まれないのに派手な観光・レクリエーション投資を行った過大な投資や放漫な経営が累積赤字として重くのしかかり、市の財政を圧迫していった。
産炭地域振興臨時措置法(以下、産炭法)が2001年(平成13年)に失効したことなどで、財政状況がさらに悪化、その後ほぼ破綻(はたん)状態にあったことが表面化し、2006年(平成18年)6月20日に後藤健二前市長が定例市議会の冒頭で、財政再建団体の申請を総務省にする考えを表明した。この時点では、2006年度決算を以て申請し2007年度から財政再建団体になる予定だった。
一時借入金などの活用により表面上は財政黒字となる手法をとったため、負債がふくれあがっていった。一時借入金残高は12金融機関から292億円、企業会計を含む地方債残高が187億円、公営企業と第三セクターへの債務・損失補償が120億円とされ、夕張市の標準財政規模(44億円)を大きく上回っていたため、一般的に10年とされる再建期間は、未知数だった。
また、市長の表明後、「空知産炭地域総合発展基金」から14億円の借り入れをしていることが明らかになる(「ヤミ起債」問題・以下参照)など、違法起債等の粉飾まがいの決算がここ何年も行われていた疑いがあり、北海道が調査に乗り出し、既に2006年度決算で再建団体適用状態だったことが判明した。これを受け、市長は2006年(平成18年)7月25日に2006年度中の財政再建団体を申請する方針を表明した。道は同年8月1日に夕張市の財政状況の調査に関する「経過報告」を公表した。
道は、再建期間短縮等の観点から、赤字額の360億円を年0.5%の低利で融資(市場金利との差額は道が負担)、国も地方交付税交付金などによる支援を打ち出した。これらの動きにより、再建期間は18年間の見込みとなった。財政再建団体指定は、1992年(平成4年)の福岡県赤池町(現福智町)以来、北海道では1972年(昭和47年)の福島町以来、市では1977年(昭和52年)の三重県上野市(現伊賀市)以来となる。
なお、当時の後藤市長は、北海道新聞(2007年(平成19年)4月17日)の取材に対して、2006年(平成18年)6月10日に同紙に巨額負債を報じられる以前の2月に総務省に特別交付税の陳情に行った際に財政再建団体を覚悟したと語っている。予定では2007年度に再建計画を策定する予定だったが、同紙報道により前倒しとなった。再建計画が遅れれば、負債額はさらに膨らんでいた可能性があったことも示唆している。
2006年度決算における実質公債費比率は38.1%だった。これは全国でも長野県王滝村の42.2%に次ぐ数字であり、財政再建団体を適用しなかったとしても、2008年度決算から適用される地方自治体財政健全化法の財政再生団体に該当することになっていたと想定される。
「ヤミ起債」問題について
産炭法の失効により、同法に沿って行われていた地方交付税の手厚い分配がなくなり、地方債への依存度が高まった。そもそも地方債発行には都道府県知事の許可が必要で、2006年(平成18年)4月からは、財政難の自治体を除き、国と地方自治体が事前協議したうえ、地方自治体の判断により発行する制度に移行、夕張市など6市町(他に歌志内市、赤平市、三笠市、上砂川町、芦別市)は限度額に近い金額を起債して極端な財政危機に陥った。そこで、「空知産炭地域総合発展基金」など各種基金や、銀行・信用金庫など金融機関からの借り入れという形をとって急場をしのいだと言われている。こうしたスキームは本来、一時的に税収が不足したときや、会計制度上財政が逼迫しやすい会計年度末に少額・短期間採られることは多い常套的手段ではあるが、6市町は税収不足の補填や融資自体の返済のために借り換えに借り換えを重ね、債務は累積し、いわゆる自転車操業状態に陥った。4月1日から5月31日は決算の出納整理期間だが、その期間を悪用して旧年度の会計に新年度の会計から貸して見かけ上黒字に見せかけるなどの違法な決算操作が行われていた。さらに、北海道拓殖銀行の破綻と道内不況が追い討ちをかけた。
なお、「ヤミ起債」問題については道の関与も疑われているが、同様の問題を抱えた産炭地域自治体も多く、北海道に限った問題ではない。産炭地など鉱山地帯が終掘後自治体として維持された成功例は、日立グループが旧炭鉱や日立銅山の労働者の大部分を吸収した常磐炭田、宇部興産を中心に重化学コンビナートに作り変えた宇部炭鉱程度しかなく、世界的に見ても極めてまれである。
財政再建計画
「映画祭」は中止、職員給与削減は2006年(平成18年)9月から実施することとなり、市長は50%(月収862,000円→431,000円)、助役は40%、教育長は25%、一般職員も15%カットとなり、4億200万円の削減となる。2007年(平成19年)4月からは、さらに削減し、市長75%(月収259,000円、年収374万円)、助役70%(月収249,000円)、教育長66%(月収239,000円)、常勤監査委員も229,000円など、徹底した削減がなされ、市長の給与は全国最低となる。市議会議員の人数も18人から9人に半減、議員報酬も311,000円から180,000円に削減される。
更には新規職員採用凍結や早期退職勧告により職員数も削減を予定している。早期退職希望者が130人を超え、定年と自己都合を合わせ、全職員の約半数の152人が2006年度末で退職した。これは当初の削減計画の人数にほぼ合致している一方、急な退職で市政の滞り等が心配されているが、市は、この早期退職により、人員削減計画の前倒しとするとしている。なお、早期退職者は、役職者が約7割を占め、部長・次長職は全員辞める。2007年度末の退職者の内訳は部長職12人全員、次長職11人全員、課長職は32人中29人、主幹職は12人中9人、係長・主査職は76人中45人、一般職が166人中46人となっている。
また、市が保有する観光施設31施設の内29施設を運営委託、売却、廃止する方針も明らかになったが、道内観光大手の加森観光を中心に委託・売却先がほぼ決定した。
市民負担も大きくなり、市民税が個人均等割3,000円から3,500円に、固定資産税が1.4%から1.45%に、軽自動車税が現行税率の1.5倍に増額、入湯税150円も新設される。また、ごみ処理は一律有料化、施設使用料も5割増、下水道使用料が10 m3あたり1,470円から2,440円に値上げ、保育料は3年間据え置くが、その後7年間で段階的に国の基準にまで引き上げる。敬老パスは廃止予定だったが、個人負担額を200円から300円に引き上げて存続されることとなった。この影響もあって転出者が相次ぎ、2006年・2007年の二年間で人口が1割近く減少した。
公共施設に関しては、多くの施設が廃止されることになっていたが、世論の反発などもあり見直され、全廃予定だった7ヶ所の公衆トイレのうち清水沢と沼ノ沢を存続、南部コミュニティセンターは、使用料引き上げ、町内会などによる管理運営を条件に存続、スイミングセンターは夏季限定で営業する予定であったが、2008年(平成20年)3月に雪の重みにより屋根の一部が崩落し使用不能となり、修復も検討されたが取り壊された。図書館は、蔵書を保健福祉センターに移設し(貸し出しは継続)、廃止となる。
2006年度・2007年度共に、各種経費削減が予想以上に効果的だったことや、およそ2億円に達する寄付金があったことなどから、計画を約4億円も上回る返済を行うことに成功している。ただし、現在の計画では年度が進むに連れて返済額が増大する(19年度の計画額は11億円だが、29年度からは20億円を越え、36年度には29億円に達する)ことから、依然楽観はできない状況である。
財政
平成19年度決算による財政状況
標準財政規模 43億5,355万7千円
財政力指数 0.24 (北海道市町村平均0.28 全国市町村平均0.55) - 北海道の平均をやや下回る
経常収支比率 84.0% (北海道市町村平均92.0% 全国市町村平均92.0%)
実質公債費比率 39.6%(北海道市町村平均14.4% 全国市町村平均12.3%) - 財政再生基準に該当
実質収支比率 △730.7%
実質単年度収支 14億7,593万3千円 - 標準財政規模の33.9%の黒字額(借金返済へ)
地方債現在高 132億6,522万5千円(人口1人当たり1,099,207円 北海道平均647,852円 全国平均446,922円) - 全国平均の2.5倍の借金
普通会計歳入合計 90億3,519万5千円
地方税 10億6,180万円(構成比 11.8%)
地方交付税 42億2,518万5千円(構成比 46.8%) - 歳入の40%以上を交付税に依存
地方債 4億6,386万3千円(構成比 5.1%)
普通会計歳出合計 425億1,951万7千円
人件費 7億7,589万円(構成比 1.8%)
扶助費 13億6,156万4千円(構成比 3.2%)
公債費 21億1,761万1千円(構成比 5.0%)
定員管理の適正度(平成19年度)
人口1,000人当たり職員数 11.60人(北海道平均8.74人 全国平均7.82人) - 職員数の減少により業務停滞が伝えられているが、実は人口に比べて職員数がやや過剰気味である:全国平均の1.48倍
一般職員89名 (うち技能系労務職3名)、教育公務員1名、消防職員37名 一般職員等合計 127名
ラスパイレス指数 68.0 (全国市平均97.0)
参考
一般職員等(127名)一人当たり給料月額 23万1,300円 (職員手当を含まない)
職員給(給料+手当)÷一般職員等(127名)=402万5千円 - 給料月額の17.4か月分
地方債等の残高(財政一覧表より)
1普通会計分 144億7,400万円
2特別会計分 39億1,600万円
3関係する一部事務組合分 0円
4第三セクター等の債務保証等に係る債務 35億2,500万円
地方債等の合計 219億1,500万円
基金の状況(財政一覧表より)
1財政調整基金 0円
2減債基金 0円
3その他充当可能基金 2億3,000万円
充当可能基金の合計 2億3,000万円
健全化判断比率・資金不足比率(平成20年度決算)
健全化判断比率
実質赤字比率 703.60% - 財政再生基準に該当
連結実質赤字比率 705.67% - 財政再生基準に該当
実質公債費比率 42.1% - 財政再生基準に該当
将来負担比率 1,164.0% - 早期健全化基準に該当
資金不足比率
市場事業会計 -%(資金不足額がなく比率が算定されず)
公共下水道事業会計 156.5% - 経営健全化基準に該当
水道事業会計 -%(資金不足額がなく比率が算定されず)