理化学研究所のSTAP細胞の論文問題に関する問題や、韓国の旅客フェリー沈没問題など、世間が注目する大きな事件が相次いでいます。
こうした事件が起きるたびに、原因究明と共に行われるのが「再発防止策の立案と徹底」です。
理研のような組織の中での不祥事と言うことならば、業務マニュアルの改訂だとか、遵法(じゅんぽう)意識の問題ならばコンプライアンス推進計画の見直しなどといったことが行われるでしょう。
韓国で沈没したフェリーは元々日本のマルエーフェリーの中古船を改造したものらしいですが、マルエーフェリーには安全管理規定なるものがちゃんとあって、ネットでも見られるようになっています。
こうした再発防止策は文字の形で表されるので、関係者が頭を寄せ合って考えれば対応方策はやがて完成するでしょう。
韓国は日本を"ベンチマークする"という表現をよく使いますが、つまりは日本の良いものは熱心に取り込みますが、この手の安全管理規定はどうしたものやら。
こうした明文化されたいわゆる"遵守すべきマニュアル"的なものは比較的簡単に作ることができます。
しかしこれを組織の中で適切に使いこなして、最低限問題が起きないようにし、問題が起きたたとしても素早く対処して沈静化させるためには、マニュアルに基づいて行動を起こすのは人間だ、という視点が欠かせません。
マニュアルはちゃんとできていても、それを守ってそれ以上の仕事をしよう、というマインドをどうやったら導き出せるかが、実は管理職やリーダーの腕の見せ所なのです。
最近はMBAのように欧米の経営哲学が日本の組織社会の中にも入ってきました。
仕事の進め方でよく言われるようになったのが「PDCAサイクル」というやつ。
これはPlan(計画して)→Do(実行して)→Check(どうだったか振り返って)→Action(実施が計画に合わない点を反省を改善する)→(再び)Plan…、と続く業務管理の手法で、それぞれの頭文字を取ってPDCAサイクルと呼ばれます。一見とっても合理的で、我々の職場などでもよく用いられています。
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でもなんだか物足りない…。私はこれらの行動の間になにか東洋哲学的な視点が加わる余地があるのではないかと思うのです。
P→☆→D→☆C→☆→A→☆→P…の"☆"のところに、例えば使命感だとか運命論だとか、チームの一体感だとか本人の成長や達成感だとか、いわゆる"人間力"を向上させるような導きの要素がリーダーや管理職に求められているのではないか、と考えます。
職員の「やる気を引き出す」という点では「モチベーションの向上」という言葉も良く使われます。
最近になってようやく「コーチング」という理論で、そうしたことへの取り組みも始まりましたが、どうやったら関係者のモチベーションが向上するかを多くの人は分かっていないし、教えられる機会もあまりあるとは言えないし、そして何度かの研修を受けただけではなかなか身につかない能力でもあることでしょう。
理研はそれを職員の給与などの待遇面で魅力を増そうとしているように見えます。
もちろんそれも大切なのですが、それにとどまらないプラスαがあるはず。
そしてそれもまさに、給与待遇面での「制度」とそれを用いてやる気を出させる現場の「運用力」といえるのではないか、と思います。
制度と運用のバランス。これを上手にはかりながらチームのパフォーマンスを向上させるにはリーダーの役割と人間力、そして実践の力なんだと、いよいよこの頃になって思うようになりました。
でも制度は目に見えても、運用する力は目に見えないのです。
そこもちゃんと評価できる力は社会にも必要だということなんじゃないでしょうかねえ。