京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

下から上へ

2024年03月02日 | 日々の暮らしの中で
午前中は小雪が舞う寒さだった。
庭の片隅の環境の悪い土中から、赤い小さな芍薬の芽が顔を出し始めているのに気づいた。
6つ、7つ。
ようこそ、ようこそ! なんという生命力!


〈雪をのけたしかめてみる褐色の芍薬の芽は一寸のたましいを持つ〉と詠んだ山崎方代。
「一寸のたましいを持つ」
もぞもぞと蠢く気力、意思のほとばしり。方代の感動に共感する。
懸命な成長の日々を見つめていくとしよう。

―『土』という漢字のタテに下ろす垂線は、逆に下から上に突き上げるようにして書かなければつまらない。
毎年毎年、芍薬の芽と出会うたびに、わたしは榊莫山さん独特な「土」の漢字の書き方を思い起こしている。
その道理は、
地上の一切の草や木、森林のすべては、土の中から芽生え、土の表面を突き破って成長し、枝や葉を茂らせ、花を咲かせるから ーとおっしゃる。

もう17年ほども前になるのか、莫山さんの書展を拝見した帰り道。連れとの会話の中で『土』(長塚節)の中に記された一節「春は空からさうして土から微かに動く」を知り、その後に出会った莫山さんの言葉だった。

平凡にみえる一日だけど、小さな発見と大きな感動が心の刺激となって、いろいろなことを教えてくれるものだ。




大根の先っぽを水につけておいた。冬場で成長は遅いけれど、やっぱり下(中)から上へと葉が出てきたわ。
コメント (4)
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