イザベラ・バードというおばさんがいる。
と言っても1904年に亡くなったイギリス人なのだが、病気療養のためにアメリカを旅行したことがきっかけで旅行作家となり、40歳を過ぎてからアジア各国を旅行して回るようになる。
が、このおばさんの旅行、並大抵の旅ではない。
1878年に日本に来た時も、日本人の通訳を一人連れただけで東北から蝦夷のアイヌまで行ってしまうのだ。
130年ほど昔の日本、この人の「日本奥地紀行」を読むと、それこそ「秘境」だ。
農民は裸同然だし、子供たちは皮膚病だらけ、宿に泊まれば蚤や南京虫に襲われる。それでも日本は美しく、日本人は勤勉だと言うこのおばさん、よっぽど旅行が好きだったんだろう。
さて、イザベラおばさんは1889年、58歳のときにチベットへ行く。その記録が "Among the Tibetans" という本。
チベットといってもチベット本土はこの頃、鎖国中なので、カラチからカシミールを通ってラダックに入り、ヌブラまで足を伸ばしてから南下して、キーロン、ロータン・パス、シムラと旅している。
今、車で旅行しても大変なこのルートを、おばさんは馬やヤクで旅したのだからすごい。カシミールからラダックに入る峠越え、さらにレーからヌブラへの峠越えが大変だったと書いているが、それはそうだろう、ヌブラへのカルドゥン・ラ(峠)は5600メートルあるのだから。現地人のポーターや馬も鼻血を出して苦しんだという。
このカルドゥン・ラ、昨年ザンスカールに行った帰りに峠の上まで車で行った。
峠からレー方面
看板には「世界一高い自動車道」とある。
世界一かどうかはいまいち怪しいが(何しろインドや中国はすぐ世界一と主張したがる)、5000メートルをゆうに越えているのは確かなので、ザンスカールで高地順応していてもうろちょろすると頭がふらふらする。
そんな峠道を欧米人は自転車でやってくる。それも結構な年のおじさん、おばさんだ。この日見かけたのはオーストリアからの団体。
おばさんの一人がふらふらになりながらも無事上ってきたのでみんなが拍手して迎えたら、おばさん、感激して泣き出した。見ているこちらももらい泣き。
やっぱり肉食の欧米人はイザベラおばさんの時代からタフだ。
ところでイザベラおばさん、カシミール人にはよほどいやな思いをしたらしく、カシミール人は「背が高くハンサムだが、うそつきで、卑屈で、疑り深く」、それに比べてチベット人は「チビで醜く無骨だが、正直で親しみやすく、最高に感じがいい」とベタ褒めだ。
100年ちょっとで変わったもの、変わらないもの。昔の旅行記も面白い。
Amazon.co.jp: Among the Tibetans: 洋書: Isabella L. Bird,Edward Whymper
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と言っても1904年に亡くなったイギリス人なのだが、病気療養のためにアメリカを旅行したことがきっかけで旅行作家となり、40歳を過ぎてからアジア各国を旅行して回るようになる。
が、このおばさんの旅行、並大抵の旅ではない。
1878年に日本に来た時も、日本人の通訳を一人連れただけで東北から蝦夷のアイヌまで行ってしまうのだ。
130年ほど昔の日本、この人の「日本奥地紀行」を読むと、それこそ「秘境」だ。
農民は裸同然だし、子供たちは皮膚病だらけ、宿に泊まれば蚤や南京虫に襲われる。それでも日本は美しく、日本人は勤勉だと言うこのおばさん、よっぽど旅行が好きだったんだろう。
さて、イザベラおばさんは1889年、58歳のときにチベットへ行く。その記録が "Among the Tibetans" という本。
チベットといってもチベット本土はこの頃、鎖国中なので、カラチからカシミールを通ってラダックに入り、ヌブラまで足を伸ばしてから南下して、キーロン、ロータン・パス、シムラと旅している。
今、車で旅行しても大変なこのルートを、おばさんは馬やヤクで旅したのだからすごい。カシミールからラダックに入る峠越え、さらにレーからヌブラへの峠越えが大変だったと書いているが、それはそうだろう、ヌブラへのカルドゥン・ラ(峠)は5600メートルあるのだから。現地人のポーターや馬も鼻血を出して苦しんだという。
このカルドゥン・ラ、昨年ザンスカールに行った帰りに峠の上まで車で行った。
峠からレー方面
看板には「世界一高い自動車道」とある。
世界一かどうかはいまいち怪しいが(何しろインドや中国はすぐ世界一と主張したがる)、5000メートルをゆうに越えているのは確かなので、ザンスカールで高地順応していてもうろちょろすると頭がふらふらする。
そんな峠道を欧米人は自転車でやってくる。それも結構な年のおじさん、おばさんだ。この日見かけたのはオーストリアからの団体。
おばさんの一人がふらふらになりながらも無事上ってきたのでみんなが拍手して迎えたら、おばさん、感激して泣き出した。見ているこちらももらい泣き。
やっぱり肉食の欧米人はイザベラおばさんの時代からタフだ。
ところでイザベラおばさん、カシミール人にはよほどいやな思いをしたらしく、カシミール人は「背が高くハンサムだが、うそつきで、卑屈で、疑り深く」、それに比べてチベット人は「チビで醜く無骨だが、正直で親しみやすく、最高に感じがいい」とベタ褒めだ。
100年ちょっとで変わったもの、変わらないもの。昔の旅行記も面白い。
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