パリで一番好きな美術館はモロー美術館。
過去に二度行っているので、その収蔵品の来日であるこの展覧会は行かなくてもいいかな、と思っていたが、よく通る駅のポスターに誘われて行ってみた。
会場であるパナソニック汐留美術館は初めて。
オフィスビルの4階にあって、同じようなビルの並ぶ汐留はわかりにくい。
会場もごく小さくて狭いので、平日昼間の会場は混んでいるというほどではなかったものの、離れて絵を見たりするのにはあまり向かない。
展示はモローを巡る二人の女性、母親と恋人に関するものから始まっていてこれがうまい。
80過ぎまで生きた母親に献身的だった息子、30年も連れ添いながら結局一緒になることなく、恐らくは影の存在だったであろう恋人との関係は示唆的で、ここから飽きることなく描き続けたファム・ファタールを見せられると、モローはいかにも強い女性に支配され続けた人に見える。
描かれた美しい女性たちが日本の男性向け漫画に登場する「気弱な男に積極的にアプローチしてくれるかわいいのにエロい女の子」に見えてしまうとは、この展覧会の学芸員に乗せられすぎだろうか。
展示は「出現」と「一角獣」が目玉で、あとは習作がほどんどだが、制作の過程が見えるのは面白いし、ラフな習作は抽象画のよう。
パリの美術館で印象的な水彩画があまり来ていないのは保存の問題か。
内容と規模から言って1000円の入場料なら妥当と言う感じ。