文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:万能鑑定士Qの推理劇IV

2016-03-12 10:07:41 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
万能鑑定士Qの推理劇IV (角川文庫)
クリエーター情報なし
角川書店

・松岡圭祐


 あらゆるものの真贋を鑑定する凄腕の女性鑑定士、凜田莉子が活躍する「万能鑑定士Q」シリーズ。こちらは、そのうちの「推理劇」篇の第四巻。

 かって世間を騒がした「力士シール」。それが、莉子の店に大量に貼られる。そして莉子の名を騙った、おばあに対する振り込め詐欺。店の経営にも行き詰っていた彼女は、ついに故郷の波照間島に帰ることになってしまう。

 裏で動いていたのは、贋作界の大物コピア。莉子に散々商売の邪魔をされてきたのを根に持ってのことのようだ。対するは、莉子を初めとする浅倉絢奈、雨森華蓮(+莉子と絢奈の彼氏二人)。シリーズに登場する綺麗どころが勢ぞろい。果たして、チーム凜田 v.s. コピアの対決はいかに。

 本筋のストーリーの中にトリビア的な小ネタが織り込まれて進んでいくのはいつもの通り。武器は、莉子のロジカルシンキングと絢奈のラテラルシンキング。そして華蓮はそのどちらも使いこなせるようだ。

 莉子には、大きなトラウマがある。とんでもないおバカだった昔の自分だ。だから、現在の自分の知性を否定されるようなことが起きると、ものすごく落ち込んでしまう。しかし、ただ強いだけのヒロインに、人は魅力を感じないだろう。この弱さが莉子という人物に大きな魅力を与えているのだ。

 そしてもう一つの強力な武器は「泣き落とし」(笑)。華蓮は、最初はコピアとの対決に手を貸すのを渋っていたのだが、断られて泣き出す莉子に、「友達をほうってはおけない。そこまで薄情にはなれないし。」(p167)と参戦を決意する。まあ、これも莉子の魅力の一つである普段の優しさがあってのことなんだろうが。

 最終決戦は波照間島。しかし、本作で描かれるコピアはいやに小者、小物している(実はこれには理由があるのだが)。コピアの最後の捨て台詞、「『万能鑑定士Qの推理劇5』でまた会おう!」に、莉子が「それはない」(p286)と即答したのには笑った。推理劇シリーズはこの間が完結だから、確かにないだろうなあ。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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