文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:探偵の鑑定Ⅰ

2016-03-28 08:11:08 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

探偵の鑑定I (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社

・松岡圭祐

 「万能鑑定士Q」シリーズのヒロイン凜田莉子と「探偵」シリーズのヒロイン沙崎玲奈がまさかの競演。帯によれば、この作品が両シリーズの完結編になるらしい。

 玲奈は、妹の敵である「死神」を倒し、古巣のスマ・リサーチに戻っていた。顔に傷を見かけることもなくなり、相変わらず対探偵課としての活動は行っていたものの、それなりに落ち着いているようだ。峰森琴葉との関係も、以前のように相互依存の関係ではなく、友達としての信頼関係を築いている。

 ところがなんと莉子が探偵業界から目を付けられてしまう。鑑定業を隠れ蓑にして、許可もなく不当に探偵業を営んでいるのではないかと。週刊角川の記者で莉子の彼氏の小笠原悠斗もそれに手を貸しているというのだ。そこで調査をすることになったのが玲奈という訳だ。

 ところが莉子が偽警官に襲われたところを玲奈が助けたことから二人の世界が交わってくる。そのころ世間では穴のあいたパーキンのバッグを使って大金をだまし取る詐欺が頻発していた。莉子が、そのパーキンの鑑定を依頼されたことに関係がありそうだ。裏には暴力団獅靭会の影がちらつく。「トランプ」という言葉に何か秘密があるらしい。

 莉子と玲奈、二人の住む世界はあまりにも違いすぎている。時に犯罪者を相手にすることはあっても、どこまでも優しく、人を信じようとする莉子。これに対して、玲奈が生きるのは、バイオレンスの世界。信じれば足元をすくわれかねないのである。松岡作品のヒロインの光と影を代表するこの二人のヒロインのコラボはいったどうなっていくのか。

 玲奈はけっして莉子の世界の住人にはなれない。二人がコラボするとなれば、いやおうなく莉子が玲奈の世界に足を踏み入れざるを得ない。作品もその方向で進んでいき、驚くような展開となっていく。それは莉子だけでなく小笠原の運命も大きく変えることになるのだ。

 「水鏡推理」のヒロイン水鏡瑞希が、学生時代アルバイトをしていた探偵社の話も少しだけだが出ているので、松岡ファンならいろいろと楽しめるだろう。しかし、莉子の強い味方である雨森華蓮や「特等添乗員α」シリーズの浅倉絢奈は出てこなかったが、果たして2巻ではどうなっているのだろうか。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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