文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:女流淫法帖

2016-03-30 20:12:01 | 書評:小説(その他)
女流淫法帖
クリエーター情報なし
二見書房

・睦月 影郎


 「柳生忍法帖」ではありません。「女流淫法帖」です。剣豪小説ではありません。官能小説です。もちろん作者は、山田風太郎ではありません。官能小説界の巨匠、睦月影郎です。

 主人公は、一色恭吾という、高校時代から官能小説家を目指している大学1年生。官能作家たちのオフ会にも参加するという熱心さです。でも官能小説家を目指そうというのに、女性経験はなし。「妄想だけで官能小説を書こうってどうなの」と思わないこともないのですが、恭吾君の年頃は、男子の一生のうちでも、最も妄想力の盛んな時代。案外とうまくいくものなのかもしれません。

 恭吾は、大学で空手部の上級生から難癖をつけられているところを、五色茜という美少女に助けられます。茜は、空手部の猛者を難なくあしらってしまうほどの、忍びの技の達人。ちょっと男子としては情けない出会いなのですが、これがきっかけで、恭吾と茜は付き合うことになるのです。こんなうまい話があるわけはないと思うのですが、そこは官能小説。だから茜の初めてをもらうことになるのは当然の流れなのでしょう。

 ところで、その頃官能小説業界には激震が走っていました。御床番と名乗る謎の官能作家が、ネット上にあらゆるジャンルの官能小説を、それも出来の良いものを無料で公開していたのです。官能小説業界を襲ったフリー革命のインパクトに、業界の重鎮たちは大ピンチ。

 御床番の正体を突き止めるには、彼が指定した5人の性の手練れを相手にして勝たなくてはならないのです。そこで、官能作家とはいえ既に実技の方には自信のなくなった大御所たちが目を付けたのが、若くて元気な恭吾というわけです。

 初戦はあっさり返り討ちにあって後がない恭吾君は、茜から忍びの秘術を伝授してもらうことになるのですが、ここに一つ疑問がわきます。茜は恭吾が初めての相手だったということですが、知識だけでそのような秘術を会得できるものなのでしょうか。やはり実技も相当こなしてないとできないと思うのですが。

 恭吾が授けられた技は、ネバネバ鳥もちの術とリサイクルの術。出したものが鳥もちのようになって、相手の喉を塞ぐというものと、出したものをまた吸い込んでリサイクルして何度も使うというものです。使い道は、想像に任せますが、2つ目は衛生面でも少し問題がありそうですね。一応、使用上の注意として、非正規の場所(後ろの方)では、この技を使ってはいけないことになってはいるのですが。

 茜にさずけられた秘術のおかげで、順調に御床番からの刺客を下していく恭吾ですが、事態は思わぬ方に進んでいきます。この展開ぶりにはびっくりするのではないでしょうか。茜とも驚くような出来事があったのですが、結局はハッピーエンドで収まりました。官能小説の形をとっていますが、かなり変わったボーイミーツガールものとして読むこともできるでしょうか。誰ですか、恭吾になりたいと言っている人は(笑)。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。



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