文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々

2017-10-03 09:23:32 | 書評:ビジネス
アメリカを動かす『ホワイト・ワーキング・クラス』という人々 世界に吹き荒れるポピュリズムを支える
クリエーター情報なし
集英社

・ジョーン・C・ウィリアムズ、(訳)山田英明、井上大剛

 2016年度のアメリカ大統領選挙では、大方の予想を裏切りトランプ氏が当選した。いまいったいアメリカでは何が起きているのか。なぜトランプ氏は大統領に選出されることができたのか。本書は、その疑問を、「ホワイト・ワーキング・クラス(白人の肉体労働者)」という観点から解き明かそうとするものだ。

 本書を読む限り、我が国と比較するとアメリカは階級意識が強いようだ。本書ではあちこちに「階級」という言葉がちりばめられている。この階級というのは、エリート層(専門職・管理職層)、労働者層、貧困層に分けられるようだ。

 アメリカの労働者階級の価値観は、エリート層とは異なっている。彼らは変化を嫌い、自らのコミュニティに軸足を置いた生活をしている。そして、政府は、貧困層にばかり目がいっているという不満を抱えているのだ。これが日本となると、一部を除いては階級意識を今でも持っている人は少ないだろう。我が国では出自が労働者階級だが、階級の壁を乗り越えて専門職になったなどという言い方はまずしない。

 また、大学の学位に関しての価値観も日本と大分異なるようだ。エリート層は、当然のように一流大学を目指すのに、労働者階級は大学というものをそう重要視してはいない。猫も杓子も大学に行きたがるが、その一方で大学教育に対してあまり信頼を置いていない我が国とは大分事情が異なっているようだ。

 本書を読んで感じるのは、アメリカという国に広がる病理である。自由の国であるはずのアメリカに「階級」というものがふさわしいとは思わないが、それがかの国の現実でもあるのだろう。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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