文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:本当は中国で勝っている日本企業 なぜこの会社は成功できたのか?

2017-10-19 10:34:12 | 書評:ビジネス
本当は中国で勝っている日本企業 なぜこの会社は成功できたのか?
クリエーター情報なし
集英社

・谷崎光

 北京に暮らして17年になるという著者による中国のビジネス事情。著者によれば、中国で成功している日本企業は多いが、そのことはあまり知られていないという。本書で紹介されているのは、FAの三菱電機、自動販売機の富士電機、化粧品の伊勢半、マヨネーズのキューピー、生活必需品の良品計画、ユニ・チャーム、名創など。

 近年発展の著しい中国だが、中国における賃金は高騰を続けており、優秀な中国人スタッフを確保したいなら、高給を払わないといけないようだ。中には部下の中国人の方が、日本から来た管理職より給料が高い例もあるようだから驚いてしまう。

 中国においては、転職は当たり前で、転職することによりどんどんと給料の高いところに移れるらしい。これは日本とは大違いで、新卒採用を重視する日本では、役職が上がっても、給料はさほど差がなく、転職すればするほど給料が下がっていく。中国とはえらい違いだ。次の記述はとても気になる。

「そういえば数年前から、中国の液晶メーカーが日本人技術者を引き抜いていた。技術はどんなに防御策をとってもマネされていく。」(p83)

 技術者が引き抜かれるのは、向こうの方が待遇が良いからだろう。引き抜かれるのがいやなら、優秀な技術者の処遇を厚くすれば済むことだ。横並びの悪平等といった日本企業の慣習を改めない限り、日本企業はグローバルになったビジネスの世界で置いていかれるのではないだろうか。

 しかし、いくら発展が著しくとも、中国の現場力はまだまだのようだ。

「中国人はいいものは見たことはないし、日本側はいいものしか見たことがないし」(p30)

「いや、図面が同じでも中国で作ると変わるんですね」(p81)

 中国人が日本製品を爆買いするのも、品質の高さと安全・安心を求めているからのようだ。品質の良さは、現場力に依存する。しかし、現場力は一朝一夕には築けないものだ。著者はあと10年は日本企業は中国で稼げるとみているようだが、結局現場力がどれだけ育つかということにもかかっているのだろうと思う。

 本書を読めば、中国で成功している企業の成功するための秘訣の一端でも掴めるのではないだろうか。もし、中国に行くことになれば、一読しておいた方が良いだろう。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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