文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:大宇宙の魔女―ノースウェスト・スミス

2017-10-17 10:02:59 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
大宇宙の魔女―ノースウェスト・スミス (ハヤカワ文庫 SF 36)
クリエーター情報なし
早川書房

・C.L.ムーア、(訳)仁賀克雄

 学生時代に夢中になって読んだ、C.L.ムーアによるノースウェスト・スミスシリーズの一冊。自分で持っていたのだが、だいぶ前に故郷の図書館に寄贈してしまった。先日寄ってみると、まだその図書館に置いてあったので再読してみたという訳である。C.L.ムーアは女性作家で、彼女の夫も、有名なSF作家のヘンリー・カットナーだ。夫婦の合作も多いが、このシリーズは彼女単独の作品である。

 主人公は、ノースウェスト・スミスという熱線銃片手に宇宙を渡り歩く無法者だ。スミスの相棒が、金星人のヤロールだ。彼はしばしばスミスのピンチを救っている。

 本書は短編集になっており、収められているのは、以下の4話。

・シャンブロウ
・黒い渇き
・深紅の夢
・神々の塵

 「シャンブロウ」では、スミスは群衆に追われていた愛らしい娘を助ける。彼女は、猫を思わせるような顔と4本指の四肢を持った人ならざるものであった。彼女を助けたことで、スミスは、悪夢のような体験をすることになる。

 著者の代表作とも言っていい本作だが、ギリシア神話に出てくるメデューサの話をモチーフにしたこの作品は、淫靡な美しさに満ちている。

 「黒い渇き」では、諸国の王候たちが争って求めるという、金星のミンガの処女の一人の要請で、彼女たちの支配者ミンガ城主アレンダーと対峙することとなる。

 「深紅の夢」は、夢の世界の話だ。「神々の塵」では、スミスはヤロールと共に、古代神ファロールを復活させられるという神の塵を探す。

 挿絵を描いているのは、松本零士。なぜか美女は裸に近い姿で描かれている。ただし、最後の「神々の塵」ではどういうわけか美女は出てこない。

 20世紀を代表する女性SF作家で、現在でも根強いファンの多い彼女だが、残念ながら早川文庫SFでのこのシリーズは既に絶版になっているようだ。しかし、論創社から、ノースウェスト・スミスシリーズを全部収めた「シャンブロウ」が単行本として出ているので、そちらを読んでみるのも良いだろう。

シャンブロウ (ダーク・ファンタジー・コレクション)
クリエーター情報なし
論創社


 もし、英語に自信があるなら、お得な「The Best of C.L. Moore」もキンドルで読むことができる。もちろん、代表作の「シャンブロウ」も入っている。

The Best of C.L. Moore (English Edition)
クリエーター情報なし
Diversion Books



☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする