![]() | 大宇宙の魔女―ノースウェスト・スミス (ハヤカワ文庫 SF 36) |
クリエーター情報なし | |
早川書房 |
・C.L.ムーア、(訳)仁賀克雄
学生時代に夢中になって読んだ、C.L.ムーアによるノースウェスト・スミスシリーズの一冊。自分で持っていたのだが、だいぶ前に故郷の図書館に寄贈してしまった。先日寄ってみると、まだその図書館に置いてあったので再読してみたという訳である。C.L.ムーアは女性作家で、彼女の夫も、有名なSF作家のヘンリー・カットナーだ。夫婦の合作も多いが、このシリーズは彼女単独の作品である。
主人公は、ノースウェスト・スミスという熱線銃片手に宇宙を渡り歩く無法者だ。スミスの相棒が、金星人のヤロールだ。彼はしばしばスミスのピンチを救っている。
本書は短編集になっており、収められているのは、以下の4話。
・シャンブロウ
・黒い渇き
・深紅の夢
・神々の塵
「シャンブロウ」では、スミスは群衆に追われていた愛らしい娘を助ける。彼女は、猫を思わせるような顔と4本指の四肢を持った人ならざるものであった。彼女を助けたことで、スミスは、悪夢のような体験をすることになる。
著者の代表作とも言っていい本作だが、ギリシア神話に出てくるメデューサの話をモチーフにしたこの作品は、淫靡な美しさに満ちている。
「黒い渇き」では、諸国の王候たちが争って求めるという、金星のミンガの処女の一人の要請で、彼女たちの支配者ミンガ城主アレンダーと対峙することとなる。
「深紅の夢」は、夢の世界の話だ。「神々の塵」では、スミスはヤロールと共に、古代神ファロールを復活させられるという神の塵を探す。
挿絵を描いているのは、松本零士。なぜか美女は裸に近い姿で描かれている。ただし、最後の「神々の塵」ではどういうわけか美女は出てこない。
20世紀を代表する女性SF作家で、現在でも根強いファンの多い彼女だが、残念ながら早川文庫SFでのこのシリーズは既に絶版になっているようだ。しかし、論創社から、ノースウェスト・スミスシリーズを全部収めた「シャンブロウ」が単行本として出ているので、そちらを読んでみるのも良いだろう。
![]() | シャンブロウ (ダーク・ファンタジー・コレクション) |
クリエーター情報なし | |
論創社 |
もし、英語に自信があるなら、お得な「The Best of C.L. Moore」もキンドルで読むことができる。もちろん、代表作の「シャンブロウ」も入っている。
![]() | The Best of C.L. Moore (English Edition) |
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Diversion Books |
☆☆☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。