文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:地理 2017年 10 月号

2017-10-21 13:14:51 | 書評:その他
地理 2017年 10 月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
古今書院


 地理10月号の特集は「防災 知っておきたい地形用語」である。この特集を読んでいると、中高では大嫌いだった社会科の一分野としての地理に関する記事を読んでいる気がしない。むしろ地球科学系の雑誌を読んでいるような感じになるのである。いや、これは、今に始まったことではない。以前からこの雑誌を読む度に同じような気持ちになる。だからこそ、「地理」嫌いを自認する私が、「地理」と銘打ったこの雑誌をずっと読んでいるのだろうと思う。

 しかし、私のようなへそ曲がりにとっては、どうかなと思うような記述もある。それは、「大学で学んだ地理学の知識や技術は、社会人になってから業務で直接活用することはほとんどありません。」(p9)と言いながらも、地理学を学んで社会で活躍している人は、「地理学という手法や考え方が社会にとって有用であることを実感していると言えます。」(p11)としている。それは本当だろうか。有用だったとしても、それは地理学独特の手法や考え方なのか、それとももっと一般的なものなのか。その辺りが、私にはよく分からない。

 ところで、地理学は、人文地理学と自然地理学に分かれるようだ。後者は理学部などのいわゆる理系学科に置かれることもあるが、地理学科は、日本においては圧倒的に文学部に置かれる例が多い。地理というのは、本来地球科学的なものも含めた学際的なものだと思うが、高校の指導要領などでは、地理歴史とひとくくりにされている位だから、これは社会の一教科だという思い込みは誰もが持ってしまうのではないだろうか。

 文学部で社会の一科目のような地理を収めて教員になった人が(おそらく高校の地理の教員は、圧倒的のこちらが多いはずだ)、自然科学分野にまで手が回るかどうかは非常に疑わしい。だから高校までの地理はあれほどつまらなかったのかと最近は思うようになった。この雑誌の執筆者を見ても、かなりの人が自然科学分野を専攻した人である。現在の蛸壺のような高校までの地理はなんとかならないものかと思う。

 話は変わるが、最初の方に掲載されている「地理ちりブログ」に、国際地理オリンピック2017で日本の高校生の活躍ぶりが掲載されていたのだが、通常のマスコミではほとんど報道がなく、この雑誌を読んで初めてそのことを知った。運動の方のオリンピックは、あれだけ報道するのに、もっと文化的な活動の方にも目を向けて欲しいと思うのは私だけだろうか。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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