明治・妖モダン (朝日文庫) | |
クリエーター情報なし | |
朝日新聞出版 |
・畠中恵
舞台は、明治の世になって20年を経たモダンな銀座。主な登場人物は、銀座四丁目にある巡査派出所に勤務する原田と滝の両巡査。彼らが入り浸っている牛鍋屋の亭主百賢とその常連客のタバコを商う赤手、三味線の師匠のお高など。
江戸の夜は、暗闇が支配し、妖たちがうごめいていた。文明開化の世の中になり、夜はガス灯で明るく照らされ、もはや妖怪たちの出番はなくなったように思われる。いったい妖怪たちはどこに行ってしまったのか。
この物語は、「しゃばけシリーズ」でユーモラスな妖を描いた著者が、その問いに対する一つの解答を与えるものだろう。もちろん妖など元々いる訳はないが、もし仮にいたとしたら、この作品のようなことになっているのではないかと思う。
収められているのは、以下の5つの短編。
1.煉瓦街の雨
2.赤手の拾い子
3.妖新聞
4.覚り、覚られ
5.花乃が死ぬまで
さてさて、文明開化の世の妖譚、いったいどう展開するのか乞うご期待。
☆☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。