日本の漫画本300年:「鳥羽絵」本からコミック本まで | |
清水 勲,猪俣紀子 | |
ミネルヴァ書房 |
本書は、タイトルの通り、300年にわたり、「鳥羽絵」本から現代コミック本までを紹介したものである。体裁としては、上に各年の代表的な本に対する簡単な解説があり、下欄(多少の例外あり)に実際の絵が紹介されている。ただし、紹介されている本のすべてが下欄に紹介されているわけではなく、一部が紹介されている。逆に赤本については絵のみ紹介されており、上部には解説が見当たらない。実は最初、この赤本というのがよく分からなかったのだが199ページの下欄に解説があり、なぜ赤本というのか理解できた。しかし、こういった解説は上欄の本文の方に入れるべきだろうと思うのだが。
面白いと思ったのは、昭和6年に発売された「女百態エログロ漫画集」。158ページ下欄に、海辺での女性の絵と女性の座っている絵が2枚紹介されているが、どこがエログロなんだろうと思ってしまう。おそらく海辺で水着になっているのと脚(ひざ下)を出しているのが、当時の感覚からはエロかったのだろうなと推測するのだが、作者が現代のビキニの水着やミニスカートの女性を見たらどう思うだろうか。
もう一つ思ったのは、現代漫画の作者は昔に比べると絵がはるかに旨くなっているということだ。例えば昭和29年に発表されたゴジラ漫画。228ページに絵が紹介されているが、全く迫力がない。今このレベルで出版社に持ち込みをすれば門前払いを食らうだろう。
300年を1冊に収めるという本書の性格上やむを得ないかもしれないが、欲を言うと、紹介する本のチョイスに異論がある。どうして、浦野千賀子の「アタックNo.1」は入っているのに、山本鈴美香の「エースをねらえ!」が入っていないのだろうか。また、横山光輝にしても、他の作品は入っているものの、「伊賀の影丸」なんかが入っていないのだ。楳図かずおの「おろち」や古賀真一の「エコエコアザラク」も抜けている。この辺りは著者の好みが入っているのだろうか。
ともあれ、300年にわたって漫画を並べて紹介するのは面白い試みである。次はジャンルを絞ってやってみると面白いかもしれない。
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