超常現象: 科学者たちの挑戦 (新潮文庫) | |
NHKスペシャル取材班 | |
新潮社 |
本書は、心霊現象や超能力などの超常現象を最先端の科学で検証しようとするものだ。そのスタンスが書かれた部分を引用してみよう。
「しかし今回の番組は、そのどちらでもない。我々がとったスタンスは、次のようなものである。まずは、超常現象を最先端の科学で徹底的に検証し、何がどこまで分かってきたのかを、詳細に見極めていく。(中略)現代科学ではまだ説明できない現象があったとしても、その事実をありのままに伝えていこうというものだ。」(p14)
今の科学ですべてが説明できるわけがない。一例をあげると量子力学だが、本当のところが分かっている人間は皆無だろう。計算結果が現象をよく説明できるので使っているが、あるところから先は誰も分からないのだ。でも科学が発達すればどうなるかは分からない。ただ、すべてを今の科学で説明できないことを強調しすぎると、疑似科学のようなものや、科学的とは到底呼べないものに引っかかる恐れがあるだろう。
超能力を否定する手品師が、あれは手品で出来るというのをよく聞く。実際に実演してみる例もあるようだ。それなら、そのトリックをきちんと明かせばいいと思うのだが、そういったことはあまり聞かない。そのうえで、トリックかどうかを検証すればいい。
臨死体験は、夢で説明できると思う。脳が活動していれば何らかの夢を見ても不思議はない。本当の意味で、あの世から帰ってきた人間など皆無であることは指摘したい。
生まれ変わりは、世界の人口が増えていることをどう説明するのだろうか。仮に生まれ変わりがあったとすると、元々の魂が分裂しているのか、それとも生まれ変わる前は人間以外のものだったのか。前者は、これまで複数の人間が元々は同じ人間だったという主張を寡聞にして知らない。後者は仏教では魂は六道を輪廻するという思想があるので、まだ受け入れられるかもしれない。バクテリアまで入れると魂のストックは無限にある。きっとあなたは、人間になる前はバクテリアだったんだろう(笑)。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。