本書は、九州にある出版社書肆侃侃房から出されていフリーペーパーだ。テーマを定めて、同社にゆかりのある著者が寄稿している。今回のテーマは、「ゆれる」。書かれているのは、短歌からエッセイ、ショート・ショートまで色々な形式だ。
さて、「ゆれる」といえば、すぐに連想するのが地震だ。このゆれるは強烈で、確かに地震を扱ったものも見られる。しかし「ゆれる」というのはこれに限らない。例えば、風になびく髪の毛や風鈴、これも「ゆれる」の範疇である。
面白かったのは、山本佳代子さんの「ゆれる西郷さん」(p40)。これは、著者が小学生のころ、警察官をしており、見た目が西郷隆盛にそっくりなお父さんが、女装のオカマ姿で現れたというのだ。その風景を想像して思わず吹き出してしまったというのは余談。
もうひとつ面白いと思ったのは、朽木祐さんの次の短歌だ。
白妙のニーハイソックスその脚を霖の森に延べよ少女よ(p60)
「白妙の」は衣などにかかる枕言葉としてよく使われる。持統天皇の有名な歌で百人一首にも収められている春すぎて夏きにけらし 白妙の衣ほすてふ天の香具山を連想する人も多いだろう。でもまさかニーハイにかかるとは思わなかった。確かにニーハイも服の一部と言えばそうだが。でも、黒のニーハイだったらどうなるんだろうとつい思ってしまった。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。