なんと、平次と子分の八五郎が忍者に弟子入りした。弟子入り策は左内坂の浪人成瀬九十郎。忍術にも流派は色々あるが、平次が弟子入りしたのは、伊賀でも甲賀でもない霞流という珍しい忍術。成瀬九十郎には、お加奈という娘がおり、寂しい感じだが、なかなかの美人。八五郎は、いつものようにこの娘にご執心。八五郎に言わせれば、お加奈は夕顔の花のようだということらしい。二人は、次平と五郎八と言う偽名で忍術道場に入門する。(ものすごく安直な偽名の付け方のような気がするが)
一方そのころ、江戸では山脇玄内という泥坊が世間を騒がせていた。主に、高家大名や大町人を襲い、奪った金を貧乏人にばらまくのだから世間から喝さいを受けていた。
平次が忍術道場に入門したのは、奉行所から、謀反むほんの企てがあって大変なので、中に入って探るように命じられたからだ。そのうち、平次は、成瀬九十郎こそ山脇玄内ではないかと思うようになるのだが、事件は意外な方向に動く。
銭形平次の物語には、平次のライバル?として、名探偵ならぬ迷探偵が出て来て、話を盛り上げている。有名なのは、三ノ輪の万七だが、この話ではなんと八五郎がその役目を引き受けている。なにしろ無実の成瀬九十郎とお加奈をふん縛っているのだから。
「お加奈は泣いていましたぜ、可哀想に」
「俺はただ泣かせただけだが、お前は縛ったじゃないか。いずれにしても夕顔の花とは縁がないよ、諦めるがいい」
まだまだ八五郎には、春は来ないようで・・・
しかし、すっかり銭形平次に嵌ってしまったようだ。1話あたりが短くすぐ読めるのもいい。時代考証的には、少々変な点もあるのだが、フィクションとして読めば、なかなか面白い。
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