本書は放送大学で同名の科目において使われるテキストである。
本書で言うレジリエンス(resilience)とは、ヒトが、災害などの危機的な状況から回復したり適応したりできる能力のことである。例えば、大地震から復興したり、感染症の流行から立ち直ったりできることだ。ただ、全く元の状態にもどすというのではない。場合によっては、災害を契機として、違う次元に移行するような場合もある。
例えば、フィリピンにおいては、西ルソン・ピナトゥポ火山の大噴火により、先住民族であるアエタは生活基盤を根こそぎやられるような被災をしたが、これによって先住民であるとともにフィリピン国民でもあるという自己意識を持つようになり、正当な居場所の確保と、政治・経済的な地位向上を成し遂げたのである。
この他にも、感染症に対するレジリエンスや心の問題となるレジリエンスなど様々な視点からレジリエンスというものを紹介している。
本書を読めばレジリアンスという概念を身に着けることができるとともに、レジリアンスにもいろいろな種類があることが分かり、頭を柔らかくするために貢献するのではないかと思う。
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