この話は、語り手である私が、松茸をみやげに半七老人を訪ねるところから始まる。私は、明日が半七の誕生日なので、誕生祝の席に出てくれといわれた。土産の松茸は、その席の料理が1品増えるので喜ばれる。
さて、半七の誕生日の席には、半七捕物帳によく出てくる三浦老人も来ていた。松茸が話題になると、それに関係した思い出話が始まる。まず三浦老人が献上松茸の話をして、それを受ける形で半七の捕物話が始まる。
半七は両国橋をうろついている女に声をかける。女は外神田で糸や綿を扱っている大店加賀屋の女中のお鉄であった。お鉄は、武州熊谷から加賀屋に嫁に来ているお元について江戸に出てきたのだが、どうも様子がおかしい。
実は、お元、お鉄の隣村に住む安吉という男が悪い奴だった。でもアホだ。半七に追われて赤裸になり、とうとう逃げあぐねて12月の不忍の池に飛び込んで凍死してしまったのだ。ここで三浦老人の献上松茸の話に繋がってくる。実は安吉は、この件でもやらかしており、捕まったら大変と思ったのだろう。
この安吉、お鉄を手籠めにしたうえ、お元のことでお鉄を強請っていた。お鉄は安吉を殺そうと剃刀を持ち歩いていたのだ。両国橋で半七と会ったときも。
しかし、こんなことが強請の種になるとは、江戸時代ならではだろう。まあ、血液型占いのようなもので、今だったら「お前アホか」といわれそうだが。
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