歌集「サラダ記念日」で一世を風靡した俵万智さんの短歌入門というところか。ところで、この「よむ」というところを平仮名で書いているのには理由がある。短歌には二つの「よむ」がある。すなわち、「読む」と「詠む」だ。前者は、干渉すると言い換えてもいいだろう。古今の短歌から作者の好きな歌を取り上げて、それを解説している。後者は自分で短歌づくりをする、いわば実践編だ。だから第1として「短歌を読む」を設けて既存の短歌の解説をしている。続く第2章は「短歌を詠む」として、俵流の短歌のつくり方を解説している。そしてその延長として第3章の「短歌を考える」がある。
本書によれば、短歌を詠む第一歩は「あっ」だそうだ。「あっ」というのは、心が揺れたとか何かを感じたということだ。そして次のステップとして、言葉を探して、三十一文字にするのである。
面白いと思ったのは、あのサラダ記念日の歌。知らないという人のために紹介しておくと、
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日(P132)
実は、実際には「サラダ」ではなく「鳥のからあげ」で、日にちも六月七日だったそうだ。日にちはさておき、「鳥のからあげ」では何ともしまらない。このように言葉を探すことも短歌を作るうえでは重要だろう。
心の揺れを伝えるためには、百パーセント現実に忠実である必要はない(P129)
つまり「あっ」が先に来て、それを伝えるために適切な言葉を探すということだろう。
第3章の「短歌を考える」では、みずみすしいデビューを飾りながらその後短歌から離れていった歌人、変わらずに短歌を発表し続けている人で、著者が好きな歌人とその歌をを紹介しているが、この内容なら、第1章の「短歌を読む」に含めてもいいかもしれない。
本書の内容をよく理解すれば、短歌を読むときにも詠むときにも役に立つものと思う。短歌の好きな人に勧めたい。
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