この話もいつものように平次と八五郎の掛け合いから始まる。平次は相変わらずの貧乏暮らしで、この掛け合いの中で、平次が店賃を溜めていることが判明する。今回平次は、石原の利助の娘であるお品を助けている。
この利助、かっては平次と張り合って、散々嫌がらせもしたようだが、今は中風気味で引きこもっており、娘のお品が娘御用聞として、十手取縄をなんとか守り通しているが、ここらで大きな手柄を立てなければ、返上も免れないところまで来ている。しかし、そんな利助の娘のお品を助けてやるのだから、平次も優しい。
さて事件の方だが、三年前、大阪に送る幕府の御用金5千両が、宇津谷峠で三人組の凶賊に奪い取られた。この事件を調べに行ったのが石原の利助というわけだ。三人のうちの一人・三州の藤太が駿府で役人に切られて死んだが、死ぬ前に、5千両を頭分西国浪人赤井市兵衛が隠していると白状したという。そして、藤太の煙草入れの中には鍵が1つと、次の言葉が書かれていた紙片が入っていた。
「大船町市兵衛百四十四夜」と。つまり、これがキーワードというわけだ。
平次は、このキーワードなどから、赤井市兵衛が、小舟町の白石屋半兵衛に間違いないとあたりをつける。ところがこの半兵衛が殺される。そしてこんどは番頭の喜助が殺された。果たして事件の真相は? 三人組の残る一人稲妻小僧の正体は?
キーワード自体は「なあんだ!」と思う人が多いかもしれないが、最後のどんでん返しは、結構面白かった。
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