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野村美月が、文学少女シリーズと同じく竹岡美穂とコンビを組んだ、「ヒカルが地球にいたころ」の第1作目となる、「葵」(ファミ通文庫)。野村さんも、他の作品では色々な絵師と組んでいるが、やはり、いちばんしっくりくるのは、竹岡さんだ。これと同じくらいぴったりした組み合わせは、藤原祐と椋本夏夜のコンビくらいか。
それはさておき、「文学少女」シリーズでは、様々な文学作品がモチーフとして使われていたが、このシリーズでモチーフになっているのは、基本的に一つ。タイトルから想像がつくように、源氏物語である。
主人公は、平安学園1年の赤城是光。顔つきが凶悪なことから、誤解され続けの人生を送ってきた。扱いは、すっかりキング・オブ・ヤンキー。彼を怖がって誰も近づいてこない。動物たちからすら怖がられる始末だ。だからずっと彼女はもちろん、男の友達もできなかった。そんな彼が、どういうわけか、事故で亡くなった学園の皇子で、その美貌と育ちの良さで女の子からモテモテだった帝門ヒカルの幽霊にとりつかれてしまう。
ヒカルは、心残りな女の子に、自分が渡せなくなったプレゼントを渡してくれというのだ。その相手は、この巻のタイトルにもなっている葵という美少女だ。なんでも、ヒカルの婚約者だったという。しかし、葵はヒカルを嫌いぬいているような態度だった。ヒカルは、源氏物語の光源氏同様、女の子とみれば見境がなかったからだ、しかし、是光によりヒカルの本当の気持ちを知り、頑なだった葵の心も解きほぐされる。どこか既視感の感じられるような設定ともいえるが、是光と二人で遊園地に行った時の葵の様子は、最高に可愛らしい。この辺りは、さすがに美月さんらしいところである。
幽霊ながら、初めてできた友達・ヒカルとの友情も、一連の出来事を通じて次第に深まっていくようだ。容姿も育ちも正反対な二人だが、二人の心には、相通じるものがあったのである。その容貌から、言われもなく怖がられるだけだった是光が、ヒカルの願いを叶えようと奮闘しているうちに、彼の本当の姿が女の子達に理解され、気になる存在になっていく。どうも、女子にとっては、見た目と内面のギャップも一つの萌えポイントらしい(笑)。しかし、是光が、ヒカルと葵の約束を果たしたと思ったら、他にも気がかりな女の子がまだまだいるらしい。このシリーズ10巻まででているようだから、先は長いようだ。また、ヒカルの死には、何か疑惑があるようで、ミステリー的な要素も加わり、これについても、どのように展開していくのかが気になるところだ。
ところで、この作品、作者によれば、源氏物語以外に、裏設定でもう一つ名作が織り込まれているというがなんだろう。もしかすると、「エンジェル伝説」(八木教広)か?(そんなことあるわけないか)
エンジェル伝説 1 (SHUEISHA JUMP REMIX) | |
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