雨、13度、99%
昔は、お中元お歳暮の季節に関わらず、お酒などの配達されるものが届くと、配達の方が帰ったあとには、のしに巻かれた手ぬぐいやタオルが勝手口に置いてありました。つまり、ちょいとご挨拶代わりに、という意味だったのでしょうか。この手ぬぐいやタオルには、お店の名前や電話番号が印刷されています。何かと、雑用に使う手ぬぐいやタオルですが、お店の宣伝効果にもなります。そんな手ぬぐいタオルを置いていく配達の人もすっかりいなくなりました。
こうしていただくタオルは、タオルとしては薄手です。バスタオルやフェイスタオルのような目の詰まった重たいタオルではありません。ところがこの薄いタオルは頗る重宝します。たとえば雑巾にしてもあっという間に乾きます。雑巾やおふきんはが、いつまでも乾かないのは困り者。不衛生です。
日本には、別の名入りのタオルがあります。引き出物によく使われる、デザイナーの名前の入ったタオル、決してジパンシーがデザインしたタオルではありません。カルダンがフランスで作ったタオルでもありません。引き出物に使うので、厚さはまあまあありますが、決して良いタオルというほどの厚みではありません。なんだか中途半端なタオルです。あんなデザイナーやブランド名が入ったタオルを珍重しているのは、日本だけではないでしょうか?
日本を離れて、もう長くなりました。お店の名入りのタオルもあまり好きでないデザイナーの名前が入ったタオルもいただくことがほとんどありません。そんな我が家に、どっさりと名入りのタオルが届きました。ちょっとご挨拶代わりに、ではありません。国を超えて飛んでくる荷物の緩衝剤に使われていました。段ボールの蓋を開けると、送り主の性格そのまま、几帳面に割れ物を守るように、名入りのタオルが詰められていました。のしに包まれビニールに入って、しかも真っ白のタオルです。
お礼の電話を入れると、タオルは雑巾になんて、彼女はおっしゃいます。いえいえ、お正月に新しくするおふきんに使うつもりです。元旦の朝、真っ白なおふきんをおろすのは、台所へのご挨拶と思っています。今年もよろしくねと。
そうそう、二年近くかけて整理した実家に大きな茶箱が幾つかありました。そのひとつ、開けてびっくり、全部名入りのタオルでした。よくもまあ、溜まったものです。タオルは、好きでないデザイナーの名前が入ったものも決して粗末にはしない私です。そっくりそのまま、茶箱は倉庫にいます。
町中では廃れて来た挨拶代わりの名入りのタオル、友人が住む辺りでは、今なお、ちょっと挨拶にと玄関にタオルが残されているのでしょう。とても懐かしく思います。