曇り、19度、82%
この秋は、九月も半ばの頃からモミジの紅葉をPCを通して見ることが出来ました。本州の真ん中、深山の紅葉です。まだ、緑が残る頃から次第に色付く様を小まめに送ってくれた友人がいます。日本を離れて30年近くになります。ちょうど紅葉の頃に帰国しても、いつも短い滞在で、紅葉狩りなんて縁遠いものです。日本を離れると、春の桜、秋の紅葉は、着物を纏ったような日本の美しさと感じます。
深山の紅葉は、今までの私の紅葉の認識を少し変えました。赤く色付くモミジ、緑から染まりはじめ赤くなる、そして散り際には、枯れ色帯びるものと思っていました。ところが、色付きはじめたモミジは、薄いピンクからパープル、その色を深めて移り変わります。永年その移ろいを見慣れて来た友人ですら、美しいと思うので、私に見せてくれていることが伝わってきます。単純に燃えるような赤ではありませんでした。最後は、一晩吹き続けた風で散ったモミジです。深山のモミジが散りはじめた頃、京都に住む友人がモミジの紅葉を見せてくれはじめました。これまた、深紅のモミジの紅葉です。その京都のモミジも、一昨日の雨と風で散ってしまっていました。
3日前に福岡に戻った私は、南の福岡では紅葉を期待していませんでした。街路樹のイチョウもほとんど葉を散らしています。庭先のモミジですら、惨めな姿で冬支度をはじめたのでしょうか。昨日、香港に戻る前に、実家の墓参りに行きました。福岡の萬行寺です。名物猫の「とらちゃん」が亡くなって初めての墓参りでした。本堂前にはいつも「とら」がいました、伏し目がちに急ぎます。本堂の裏手の墓地の門をくぐった途端、私は思わず歓声を上げてしまいました。きれいなイチョウの落ち葉の道です。
前日は午後から雨でした。昨日起きると晴れてはいますが、風が強く吹いています。午前中、墓参りの人もいない墓地の道です。一晩かけて、木に残っていたイチョウの葉は散ったに違いありません。まだ、誰も、このイチョウを踏んだ気配すらありません。イチョウを踏むのはもったいない、そう思うのですが、この道は一本道です。
静かに足を踏み入れました。枯れ葉のコソカソする音はありません。昨日の雨で湿っているので、まだ柔らかなイチョウの散り葉です。この横には、イチョウの大木が三本あります。この黄色の染まった道は、2,30mほどです。なんという贅沢な、今でも足の下のイチョウの感覚を覚えています。
今年は友人たちのおかげで、モミジの紅葉を楽しみました。そして、最後がこのイチョウの道です。来年も、また紅葉を楽しむ心の余裕があるようにと願っています。