曇り、10度、74%
寒くなると、シチューのような煮込んだ食べ物が欲しくなります。日本にいた頃は、アラジンのストーブの上ではいつも何かがコトコトと煮えていました。小豆のことだってああります。大きなブタの塊の時だってあります。ストーブの火があって、お鍋からの美味しい匂いは、私にとって冬の楽しみでした。ここ香港では、寒い数日間だけ、オイルヒーターを入れます。残念なことに、お湯すら沸かせないオイルヒーターです。
シチューを作るとき、お水だけでコトコトと煮たポトフも美味しいものですが、ドゥミグラスソースを使ったシチューは滑らかなソースがとても贅沢な気持ちにしてくれます。ドゥミグラスソースは、缶詰のものもありますが、家で作ったものはやはりひと味違うように思います。これまた、コトコト煮込むだけですから、思うより簡単に出来ます。冷凍庫の余裕が出来ると、時間を見て作り置きします。
牛すじ肉 450g、鶏ガラ 一羽分、タマネギ 1個、人参 1本、ニンニク ひとかけ。まずは、これらをよく油で炒めます。出て来た鶏やすじ肉の脂を落として、小麦粉を大さじ5杯ふり入れて、炒め続けます。気長に炒めてください。小麦が、ブラウンになるくらいまで炒めたら、カップ12杯の水とストックのキューブを入れて、5、6時間煮込みます。 途中火を止めても、全体で5、6時間を目安にします。ここで漉すのですが、シノワといわれるザルで、ピストーを使って潰しながら漉すのがいいようですが、これは時間と手間がかかります。私は手抜きで、別の鍋の上に普通のザルを置き漉します。ほっとけばいいので、とても楽です。具材とソースが別々になると、ソースを一煮立ちさせて、周囲に浮く脂を丁寧に取り除きます。出来たソースは、
ジップロックに入れて、冷凍庫で二ヶ月は持ちます。この用意ができると、いつでも、気が向いた時のシチューが作れます。この、ドゥミグラスソースのレシピは、今はもうお亡くなりになった帝国ホテルの村上信夫さんが家庭用にアレンジして作ったものです。ホテルの厨房では丸1週間に込むのだとか。私は、ドゥミグラスソースを作るとき、ホテルの厨房の様子を想像します。1週間昼夜を通して煮続けられるソースの香りや色つやは、やはりプロならではのものでしょう。私が、このレシピで作りはじめて30年、最初は、ドタバタでしたが、分量も空で言える頃になると手抜きも覚えます。
私は、このドゥミグラスソースで、主に牛タンやテールのシチューを作ります。ベルベットのように滑らかなドゥミグラスソースは格別です。
ソースと別にした野菜や牛のすじ肉は、 赤ワインを少し加えて温めます。もう美味しいところが抜け切ったお肉ですが、とても柔らかです。こんな残り物、もちろん私ひとりのお昼ご飯です。