曇り、19度、77%
この季節になると、決まって、ワインのダース買いをなさる主人です。お親しい方からイタリアワインを頼んだかと思えば、フランスワインのみを扱うところからボルドーばかりを頼んだり、最近は時間に正確になって来た香港のデリバリーですが家で待機する私は、なんだか囚われの身です。そのうえ、お客さんと勘違いするこの方、 とにかく興奮して出たり入ったり。イタリアワインは、覚えてくださっていて木箱に入ったまま届きました。
我が家は夫婦二人とも、お酒が好きです。主人は、頂き物もありますので、日本酒から幅広くいただきます。私は一時ウォッカに凝りましたが、なにぶんにも小さな体です、脳障害が出てはいけないと主人に止められました。しかも、若い頃からずっとお酒を欠かしません。
一升瓶に入ったワイン、知った方がいるでしょうか?これは日本での話です。1980年代のことです。メルシャンやマンズワインから一升瓶入りのワインが出ていました。まだまだ、ワインブームなんか始まるずっと以前の話です。このワインの話を、まだ、30代のいいワインを飲付けている方の話したところ、どこのワインですか?と尋ねられました。主人も私も大笑い、もちろん日本のワインではありません。各国からの寄せ集めのお安いワインです。お金がないので、そんなワインを飲んでいました。香港に来るまで、結構長い間そんな一升瓶のワインにお世話になったのです。同じ年代の方に話しても、やはり、一升瓶のワインなど知った方はいらっしゃいません。紛れもなく、日本酒の一升瓶、お醤油の一升瓶に入っていました。赤白二本買えばかなりの重さです。でも、まだ20代でしたから、重さなんてなんのその。
つい最近、雑誌でどなたかがこの一升瓶のワインのことを書いていらっしゃいました。お酒屋さんで、日本酒に並んでワインが売られていました。どこのお酒屋さんにもあるわけではありません。まだ、焼酎だってこんなにメインになる前です。一升瓶は、日本酒の世界でした。それにしても、ワインを一升瓶に入れようと考えた方、この方の発想の自由さに、思わずニンマリします。ワインだって、日本で売れば一升瓶。
日本酒の海外進出を阻むのは、なんといってもあの一升瓶に違いありません。ワインボトルはテーブルに載りますが、一升瓶では様になりません。そこで、ハーフサイズの瓶が登場したのでしょうね。香港は、アメリカについで二番目に日本酒の輸入量があると聞きました。地元の方もですが中国本土の方も高い日本酒をお好きなようです。
お客様のとき、特別な時はいいワインもいただきますが、毎晩の食卓には、オーストラリア産のマーケットワインです。いいお酒を飲めばそのまろやかさや芳醇な香りに打たれますが、そんな贅沢はたまにで充分。時折思います、若くて貧しかった頃、瓶のカチカチ触れ合う音を聞きながら持ち帰ったあの一升瓶のワインが、もしかしたら一番美味しかったのかもしれません。