曇、19度、94%
毎月月初めに、香港島の東のマントバットラーに上ります。私の足で小1時間で上れるような山です。頂上へ向かう最後の600段近い階段をのぞくと、全て舗装道路。味気ないようですが、これだけの高い建物に囲まれて生活をしていると、たとえ道は舗装されていても、土の匂いを感じる山登りは体に精気をくれます。
今月は月が明けたら雨続きでした。昨日も雨の降りそうな曇り空、降り出す前にと急ぎました。連れもない一人の山登りは、気ままです。歩くペースだって自分の思い通り。立ち止まって、好きな景色を思う存分楽しめます。そんなことが出来るのも、この山は、いつもいつも人の行き来の多い山だからです。流石の私でも、九龍サイドの山並には一人で入って行けません。
3月のはじめに来た時と違って、遠目にすら、山が春に染まっているのが解ります。毎日この山登りを日課にしている人たち、バーベキューサイトの場所取りに急ぐ人たち、そんな高い山ではありませんので、みんな軽装です。
香港の山は植林が繰り返されています。原産が香港でない木が、定期的に植え付けられています。この山などは、それらの木が育って、頂上に近付くと鬱蒼とした森になっています。そんな中、1本、なんとも素直に真っ直ぐに伸びた木を見つけます。 中央のこの木、ノーフォークアイランドパインです。名前からも解るように、オーストラリアのノーフォーク島が原産です。パインといっても、葉の形は、松のそれとは違います。 なぜか群生していません。ここばかりか、このノーフォークアイランドパインは、必ず一人で立っています。そして、お日様を求めるのか他の木より頭ひとつ飛び出して、真っ直ぐに天を向いています。この木を見る度に、私まで、姿勢を正してしまいます。霞の中でも、明るい朝日の中でも、この木の姿を見るのが楽しみです。
高い所ばかりを見てはいられません。足元のちいさな草花がここですよとささやいています。
頂上近くの石段の脇、いつも待っていてくれるのは、タチツボスミレです。 先月はまだ葉っぱだけ、今年は幾分遅く花をつけました。すみれの原種ともいわれる、タチツボスミレ。うっかりすると見逃してしまいそうに可憐です。
タチツボスミレの横に、ぽつんとタツナミソウが、このちいさな花は実に見事な作りです。 蘭を小さくしてような、こんな精巧なちいさな花があるのかと。いつも感心してしまいます。香港にも、こんな草花が育っています。
来月になったら、それこそ足元はもっと色取り取りの草花が咲きます。少し気がかりなことが、いつもなら3月の終わりには鳴き始める蝉が、今年はまだ鳴きません。蝉の発鳴き、まだうまくないジージーというあの鳴き声を今か今かと待っています。