チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

紅茶とビスケットそして修道院

2014年04月25日 | 日々のこと

雨、21度、98%

 ドアを開けると、笠を被った蛍光灯の明かりの下、テーブルの上に磁器の紅茶茶碗とビスケットが3組用意されています。つい最近、ふとしたことで思い出した光景です。この紅茶とビスケットがある景色は、50年以上も前のものです。

 私が幼稚園と小学の低学年を過ごした学校は、敷地内に幼稚園から高校までがありました。カソリック系の学校で、教会は道の向こうでしたが、学校の敷地には修道院もありました。幼稚園には僅かに男の子もいましたが、女の子ばかりの学校です。小学校は各学年ひとクラス、56人の大所帯でした。

 小学校に上がって間もなくした頃から、この56人のうち3人が放課後まで残ることになりました。3人ともクリスチャンの子弟です。聖書の勉強の為に残されています。3人の女の子の名前は、かなちゃん、ななちゃん、そしてまなちゃん、はい、私です。一番しっかりしていたかなちゃんが、時計を見て、時間だからと修道院に3人で向かいます。私が時計を読めるようになったのはずっと後のことです。

 硝子戸を開けて修道院の中に入ると、夏でもひんやりと感じました。薄暗くて、廊下にはいつも電灯がボーッと灯っていました。聖書の勉強は、クラスの担任のシスターシャールではなくて高学年のシスターに習いました。決められた部屋に入ると、いつでもそこには3組の紅茶とビスケットが用意されていました。

 子供用の聖書をそれぞれに持っています。今日は、このお話といった具合に聖書のお勉強というより物語の読み聞かせ会のようなものでした。私など、聖書のことより学校の中でいただけるおやつ、ビスケットと紅茶が何よりの楽しみでした。その3人のうちで私だけが、幼児洗礼を受けていました。まあいい加減な信者です。30分ほどのお話がすむと、誰もいない教室に3人で戻って、ランドセルを背負って、それぞれ違う方向のバスやチンチン電車で家に帰ります。

 修道院にはまだ前髪の見えるシスターもいます。当然、私たち3人ともすっかり髪が見えないシスターは坊主だろうかと、小声で話します。どうも、尼さんの剃髪のことが日本ですから連想されます。ある日、修道院の廊下で前を歩くシスターのベールをめくってみようということになりました。シスターの後ろでじゃんけんをして、負けたのは私。シスターのベールを後ろから大きくめくりました。ちゃんと髪はあるのです。そのとき、お叱りを受けたかどうかはもう忘れています。いや、楽しかったとしか記憶にありません。

 私の紅茶好きは、もしかしたらこの頃に根ざしているのかもしれません。もう半世紀です。

 ななちゃんにもかなちゃんにも、その後会ったことはありません。彼女たちも、あの修道院での紅茶とビスケットを覚えているでしょうか。

コメント
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