さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・
兄の子供が、兄嫁の弟の家にもらわれていった。
わたしより年下の男の子で、その家には子供がなく 早くから話が進められていたらしい。
その子が まだ小学校に入ったばかりの頃のことで、学校が終わると毎日のように うちに寄り、食事やおやつを食べて遅くまで遊んでいた。
わたしと姪は、途中まで送って行かされていたが、その子が 何だかとぼとぼ歩いているように思われ、そのくせ 家が近くなると突然走りだすのよ。それが いつものことなのだが、わたしは 子供心にも哀れに感じていたなあ。
兄がそんな様子を見て、大切に育てるというので養子に出したのに、食べるものさえ満足に与えていないのだろう、と嘆いていた。
そして ある日、兄は様子を探るために 突然養子先を訪ねたそうだ。
先方は驚きながらも、気持ちの良い応対をし、家はよく整頓されていて 廊下などはピカピカに磨かれていて、突然の訪問なのに食事を出してくれたが、うちなんかより ずっとご馳走だったって。
新しい母親にあたる人の話しぶりからは、養子に迎えた子が 可愛くて可愛くて仕方がないという様子が十分に伝わってきた、と。
「それでも やはり 生まれ育った家がいいのかなあ」と、兄は しみじみと呟いていたなあ。