雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

生まれた家がいい

2010-04-20 07:22:29 | さても このごろは

さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・


兄の子供が、兄嫁の弟の家にもらわれていった。
わたしより年下の男の子で、その家には子供がなく 早くから話が進められていたらしい。


その子が まだ小学校に入ったばかりの頃のことで、学校が終わると毎日のように うちに寄り、食事やおやつを食べて遅くまで遊んでいた。
わたしと姪は、途中まで送って行かされていたが、その子が 何だかとぼとぼ歩いているように思われ、そのくせ 家が近くなると突然走りだすのよ。それが いつものことなのだが、わたしは 子供心にも哀れに感じていたなあ。


兄がそんな様子を見て、大切に育てるというので養子に出したのに、食べるものさえ満足に与えていないのだろう、と嘆いていた。
そして ある日、兄は様子を探るために 突然養子先を訪ねたそうだ。
先方は驚きながらも、気持ちの良い応対をし、家はよく整頓されていて 廊下などはピカピカに磨かれていて、突然の訪問なのに食事を出してくれたが、うちなんかより ずっとご馳走だったって。

新しい母親にあたる人の話しぶりからは、養子に迎えた子が 可愛くて可愛くて仕方がないという様子が十分に伝わってきた、と。
「それでも やはり 生まれ育った家がいいのかなあ」と、兄は しみじみと呟いていたなあ。

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双子のような姪

2010-04-20 07:21:33 | さても このごろは

さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・


一番上の姪は わたしより一つ年下だったが、ふっくらとして大きいので どちらが年上だか分からないほどだった。


二人は 特別似ているわけでもないと思うんだが、他人さんが見ると よく似ているらしく、よく 双子や双子やと からかわれた。
わたしはそれが嫌で どこがそんなに似てるのや と文句を言うと、今度は 似てない双子や 似てない双子やと からかうんよ。


あの子は 全体にふっくらとしていて 手も大きかったから、ランプの煤をみがくときは あの子が大きいランプで わたしが小さいランプをみがくんよ。小さいランプには あの子の手が入らなかったからね。


あの子は 身体もふっくらしていたけれど、気持ちもゆったりとしていたなあ。わたしは こせこせと動き回っていたが、あの子はいつもおっとりしていた。やさしい 良い子だった。


あんなにおっとりした子が、何をどう急いだのか 早くに死んでしまった。まだ 数え年の十八か そこらだったと思う。
わたしは もう家を離れていたけれど、話を聞いたときは とても悲しかったねぇ。

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故郷を出る

2010-04-20 07:19:15 | さても このごろは

さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・


わたしが里を離れたのは、小学校を卒業した年の夏だった。
数え年で十四歳のときのことだが、今考えてみると、なあ・・・。
少なくとも自分の子供は、よう手放さんわなあ。


でも その頃は、村の子の多くは 小学校を出てから一、二年のうちに家を離れていたのと違うかなあ。そういう時代だったということなのだろうよ。


お盆休みに帰ってきていた長姉について大阪へ出たのだが、ああ、大阪といっても ずっと南部の泉南のあたりだけれどね。
両親は せめて秋祭りが終わってからにしなさいと しきりに止めてくれたんだが、わたしは まるで良い所へでも行くつもりで、親の反対を振り切るみたいにして 里を離れたのだが・・・、その後、遊びに帰ることはあったが、両親のもとで生活することは二度となかったなあ。

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