雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

雲と風の匂い

2010-04-24 11:03:07 | さても このごろは

さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・


子供の頃には 天気予報なんてなかったよ。
テレビはもちろん家にはラジオもなかった。新聞はあったが、さて、毎日配達なんかされていなかったんじゃないかな。


それでも てて親はお天気を当てるのが うまかったよ。
「ほら、西山さんにあんなに黒い雲がかかったから、こりゃあ、ひどい雨がやってくるぞ」と、てて親が言うと、ものの三十分も経たないうちに、土砂降りになったもんだよ。


まあ、三日も四日も先のことは分からなかったんだろうが、翌日のお天気なんかは、雨だけでなく 風の強さや暑さ寒さなども、よく当てていたよ。


わたしが、どうして分かるんか、と尋ねると、雲の様子と風の匂いに気を配っていたら、大概お天気なんか分かるもんだよ、と言っていた。
特に 西山さんの様子は、この辺りの天候を知るのに一番大切なんだ、とも言っていたなあ。

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おいしい水

2010-04-24 11:02:11 | さても このごろは

さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・


実家あたりでの生活用水は、井戸水か山からの水だった。


わたしの家には井戸があったので、主にその水を使っていたが、井戸のない家も少なくなかった。
その人たちは、山から引いている水場から 水を汲んできていた。


西山さんに連なる山の裾野からは、湧水がたくさんあり、そこから竹や木で作った樋で引いてきて、あちこちに水場が作られていた。
さあ、一か所で 十世帯位は使っていたのと違うかな。


わたしの家は どの水場とも離れていたのであまり利用しなかったが、そのまま飲む場合には、井戸水より 遥かにおいしかった。

家の井戸水は まずいなあ、とずっと思っていたけれど、大阪に出てきてからは、「ああ 田舎の井戸水は おいしかったなあ」と、よく思ったもんだよ。

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