さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・
てて親が、ウリとかスイカとかナンキンなどを売りに行くと、わたしは一人で瓜小屋の番をしていた。
退屈しながら、虫を捕まえたり、草花を摘んだりして遊んでいたが、てて親が帰ってくるのが待ち遠しかった。
それは、町へ行った帰りの てて親の籠の中には、いつも何かおみやげが入っていたからなんだ。
てて親の姿を見ると、わたしは一番に籠の中を覗き込んだ。
たいした物など入っていないんだが、せんべい二、三枚か、干したタコの足一、二本か、ごくたまに飴玉もあった。
「咲は、いつも籠の中を覗きに来るから、何ぞ買って来んわけにはいかん」と、てて親は笑っていたが、わたしは、タコの足をしゃぶりながら、とっても幸せだったよ。