雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

そろりそろりと 秋の気配が

2023-09-22 18:15:13 | 日々これ好日

     『 そろりそろりと 秋の気配が 』

    当地は 只今は 今にも降り出しそうで
    暮れてきたこともあって やや不気味な空模様
    それでも 吹く風からは 蒸し暑さは感じない
    さすがに お彼岸に入ったので
    そろりそろりと 秋の気配が 顔を覗かせているのかな
    今しばらくは 日中は暑さが残るそうだが
    ようやく 秋が感じられるように なりそうだ

                    ☆☆☆

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法華八講と四十の賀 ・ 望月の宴 ( 90 )

2023-09-22 08:17:40 | 望月の宴 ③

      『 法華八講と四十の賀 ・ 望月の宴 ( 90 ) 』 


女院(一条天皇の生母詮子)は、石山詣でから帰京なさると、間もなく、法華八講をお始めになられた。すべてにおいて、これまでの御八講に勝る盛大さは推察していただきたい。
講師(コウジ・法会において高座に登り経を講説する僧。法華八講では八人が一座ずつ勤める。)たちは、現世の御事、後世の御事を立派に奉仕なさった。
万事ぬかりなく十分に準備なさった御儀式の有様は、口にすれば通り一遍のものになってしまうほど、恐ろしいほどのすばらしさであった。
殿(道長)もその様子をご覧になられて、あらゆる山々寺々の御祈りをおさせになった。

こうして十月になると、女院の御賀(四十の賀)が行われた。土御門殿(道長の本邸)で開催なさった。
行幸などもあり、まことに立派な御賀であった。御屏風の歌の数々は、この道の上手たちが詠進した。その数は多いが、同じ筋のものは書くのを省略する。
八月十五日の夜に、男と女が物語して妻戸のもとに座っている絵には、弁の輔尹(ベンノスケタダ・蔵人であった藤原輔尹のことか?)が、
 『 天の原 宿し近くは 見えねども すみ通はせる 秋の夜の月 』
 ( 大空の 近くにこの宿があるとは 見えないが 澄み渡った秋の夜の月のもと 仲睦まじく男が通ってきている )
また、神楽を演じている所の絵に、兼澄(カネズミ・蔵人の源兼澄)が、
 『 神山に とる榊葉の もと末に 群れゐて祈る 君がよろづ代 』
 ( 神前で 榊葉を取って 本方・末方が 群れ集まって 君の長寿を祈っている )
などがあった。

舞人は一族の君達(公達)である。
様々な儀式が次第に終り近くになって、殿(道長)の君達お二人が童舞をなさった。高松殿(道長の妻明子)がお生みになった巌君(イワギミ・後の頼宗)は納蘇利(ナソリ)をお舞になった。殿の上(道長の正妻倫子)がお生みになった田鶴君(タヅギミ・後の頼通)は陵王をお舞になった。

土御門殿の有様は、広々として風情がある。築山の木々はすべて紅葉し、中島の松にまつわっている蔦の色を見ると、紅や蘇芳(スオウ・黒みを帯びた紅色)色の濃いのや薄いのや、青色黄色など、様々な色の艶めいた布切れなどを作り出しているように見えて、まことにすばらしく、池の上には、同じ色そのままに紅葉や錦が映っていて、水が鮮やかに見事な景観を生み出している。
その、色々の錦の中から現れた船の上で演奏する音楽を聞くと、身が引き締まるほどにすばらしい。
すべて、口にするにも満足に表現できず、筆をとっても書き尽くすことも出来ない。
ありとあらゆる趣向を尽くされた立派な催しであられた。

中宮(道長の娘彰子)は西の対にいらっしゃって、女院は寝殿(寝殿造の正殿)にいらっしゃるので、帝(一条天皇)も同じ寝殿の東廂(ヒガシヒサシ)の南面を御座所になさっている。殿の上(倫子)は東の対にいらっしゃって、上達部(カンダチメ・上級貴族)などは渡殿(ワタドノ)に着座なさっている。諸大夫、殿上人などは幄(アゲバリ・庭に設けた周囲と上方を布で覆った仮小屋。)に着座している。女院の女房たちは寝殿の西南の渡殿に控えている。御簾の際などの出衣(イダシギヌ)がたいそう美しい。

すべての儀式などが終り、帝は還御になられる。
帝への御贈物、上達部への禄、殿上人への被け物(カズケモノ・目下の者に与える引き出物、褒美。)など、いずれも心が込められた物であった。
神無月の日脚は短く、いつしか暮れてしまったので、諸儀式がすべて終って、女院は三条院に次の日にお帰りになられた。
これまでの御賀などはどのようなものであったのだろうか。この度のはまことに立派なものであった。入道殿(女院の父兼家)の六十の賀を、女院がまだ后宮と申し上げていた時にお催しになられたが、とてもこれほどではなかったとお思いになられるのだった。
あの舞姿の君達の可愛らしさを、誰も誰も感激の涙のあふれるままに拝見する人が大勢いたのである。

     ☆   ☆   ☆

 

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