かつて、あるお方からこんな話を聞いた記憶があります。
「交渉事は、五分五分で解決ということはまずない。ほとんどの場合、一見、五分五分のように見える場合が多いが、厳密に言えば、どちらかが優位になっているはずだ」
実は、その当時、複数のお方から似た話を聞いた記憶がありますので、何かの講演か、ネタ本のような物があったのかもしれません。
そのお方は、経営に携わっていて、若造の私にご自分の経験もまじえて話してくれました。
「商売上の交渉においては、『4.5対5.5』くらいになるのが理想で、その『5.5』をどうして勝ち取るかが成功への極意だと思う。これが、『4対6』や『3対7』では商談は決裂する可能性が高いし、もし、同じ相手から二度三度と『3対7』程の有利な取引が出来た場合には、かなりの危険を察知すべきだ。たとえば、商品に何らかの欠陥があるか、相手企業に問題が発生しているかなどだ」と。
交渉事といっても、千差万別、様々な場面が存在しています。
商談といっても、その場限りの小さな売買もあれば、企業その物の身売り話もあります。
隣近所や地域の自治会においても、ちょっとした交渉事は数多く発生しますし、国家間の交渉事の場合でも、互いの善意をベースにした物もあれば、一国の運命をかけた物もあるでしょう。
それらのいずれの交渉事においても、互いに自分側が有利になるように努力し合います。誠意を表面に置き、詭弁や暴力をちらつかせることもあるかも知れません。そうして、何とか妥協点を見つけるのでしょうが、おそらく、五分五分などということはめったにないと思われます。
昨日早朝、「アメリカとウクライナとの鉱物資源の共同開発に関する交渉が決裂した」と報じられていました。それも、大勢の記者や報道カメラの前で、トランプ大統領とゼレンスキー大統領が激しく罵り合う状況になり、用意されていたであろう合意文書の調印どころか、これからの両国間に深い溝を作ってしまったのではないかと懸念されます。
テレビ報道されている部分だけを見る限り、個人的には、ゼレンスキー大統領には、かなり読み違えがあったのではないかと感じました。
交渉事が五分五分でまとまることなどは希有の事と言えますが、そもそも、交渉に入る当事者間の力関係も、五分五分であることなどまずない事を忘れてはならないのです。
まあ、両大統領のことですから、何らかの妥協点を導き出すものと期待していますが。
外交の場において、「ウイン-ウインの関係」とか「ウイン-ウインの提案」といった言葉を耳にすることがあります。これが、交渉事の理想型だと考えられているからでしょう。
しかし、交渉事ですから、本当は五分五分の結果は極めて難しいのですが、例えば論点が二つの場合、それぞれが望む方を一つずつ有利に導くことによって「ウイン-ウイン」は成立するのだと思います。たとえそれが、客観的の見て不公平に見えても、国家や企業が存続していくために有効な契約ということはあるはずです。
残念ながら、ウクライナがアメリカと五分五分の立場で交渉することは、立前はともかく実質的には無理な話で、どうもその辺りを読み違えたように感じました。もちろん、現在のアメリカが弱者に対する配慮が欠けているように思うのは今回に限りませんが。
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