雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

過ぎにし方恋しきもの

2015-01-29 11:00:46 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二十七段  過ぎにし方恋しきもの

過ぎにし方恋しきもの。
枯れたる葵。
雛遊びの調度。
   (以下割愛)


過ぎ去った昔が恋しいもの。
枯れた葵。
人形遊びの道具。

二藍染や葡萄染などのきれいな布の切れ端が本の間に挟まれているのを見つけたとき。
また、もらった時の印象がとても深かった手紙を、、雨などが降り、ひとりやるせない日に探し出したとき。
去年使った扇。



過ぎ去った時を懐かしむ少納言さま。
出だしのフレーズ「過ぎにし方恋しきもの」は特にすばらしいと思うのです。

なお、葵とは、賀茂祭りの時に飾った葵のことであり、雛は、現在のひな人形のことではなく、子供が遊びに使う人形のことを指しています。
最後の部分の原文は、「こぞのかはほり」ですが、「かはほり」は夏用の扇のことで、翌年になって去年の夏の扇を見つけ、ひと夏の思い出が浮かんできた、ということなのでしょう。
まことに淡々と列記されていますが、少納言さまも一人の女性に戻って、過ぎ去った時をいつくしんでいるのでしょうか。

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