雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

神仙の術を伝授される ・ 今昔物語 ( 10 - 14 )

2024-05-20 13:51:37 | 今昔物語拾い読み ・ その2

      『 神仙の術を伝授される ・ 今昔物語 ( 10 -14 ) 』


今は昔、
震旦の漢の御代に、費長房(ヒチョウボウ・仙人らしい。)という人がいた。
その人が道を歩いていると、その途中に、野ざらしにされた連なった死人の骨があった。行き交う人に踏みにじられていた。
費長房は、これを見て、哀れに思って、この骨を集めて、道から遠ざけて、土を深く掘って埋葬してやった。

その後、費長房の夢に、誰とも知らない人で、姿がふつうの人とは違う人が現れて、費長房に語った。
「私は、死して後、死骸となって道の中に放置され、行き交う人に踏みにじられていた。取り隠してくれる人もなく、あのように踏みにじられて嘆き悲しんでいたが、あなたが、あの死骸を見て、慈悲の心で以て埋葬して下さったので、私はたいそう嬉しく思っております。私のほんとうの魂は、死んですぐに天上界に生まれて、幸せな日々を受けています。ただ、死骸を守るために、もう一つの魂が死骸の辺りから去ることなく、付き添っておりました。ところが、あなたがあのように埋葬して下さいましたので、そのお礼を申し上げるために参ったのです。私には、ご恩に報いる手段がありません。ただ、私は昔、生きていた時に、神仙の術を習っておりました。その習った術は、今も忘れておりません。されば、それを伝授しましょう」と。

費長房は、「私は、あの死骸がどなたかは知りませんでしたが、道に放置されていて人に踏みにじられているのがお気の毒であったので、埋葬させて頂きました。ところが、今、そのご本人がやって来て、神仙の術を伝授して下さるとは、大変ありがたいことです。すぐに習わせて頂きます」と答えた。
そして、夢の中でそれを習った。習い終ったと思った時、夢が覚めた。
その後、夢の中で習ったように術を行うと、たちまち身が軽くなって、即座に大空を自在に飛べた。
これより後、費長房は仙人となった。

されば、当然のことながら、道端に死骸があって、哀れにも踏みにじられていれば、埋葬してやるべきである。
その魂は、きっと感謝することだろう、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆


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