雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

背伸びをしすぎるな ・ ちょっぴり『老子』 ( 24 )

2015-06-19 14:44:37 | ちょっぴり『老子』
          ちょっぴり『老子』 ( 24 )

               背伸びをしすぎるな

人民の利益とは

「 絶聖棄智、民利百倍。絶仁棄義、民復孝慈。絶巧棄利、盗賊無有。此三者、以為文不足。故令有所属。見素抱朴、少私寡欲。 」
これは『老子』第十九章の全文です。
読みは、「 聖を絶ち智を棄てれば、民利は百倍す。仁を絶ち義を棄てれば、民は孝慈に復す。巧を絶ち利を棄てれば、盗賊有る無し。此の三者にては、おもえらく(以為)、文足らずと。故に、属(ツヅ)く所あらしめん。素を見(アラ)わし朴を抱き、私を少なくし欲を寡(スクナ)くせよ。 」
文意は、「 世間で評価されている聖人とか智者を絶ち棄てれば、人民の利益は百倍になる。仁とか義とかの形式ばった徳目を絶ち棄てれば、人民は孝行や慈愛を大切にする者に立ちかえる。技巧や利益重視を絶ち棄てれば、盗賊もなくなる。以上の三者では、思うに説明の文が不足していると思う。故に続く言葉を用意しよう。素をそのまま見せて、朴( ボク ・ ほおの木のことであるが、切り出したそのままの木材、ありのままの姿の意) を抱き、私欲を少なくせよ。 」といった感じです。

『老子』の教えの根幹を述べているものの一つです。
時代は変わっても、優れた指導者や、有識者だといわれる人たちによって、戦争が引き起こされ、社会が誤誘導され、国家さえ破滅していったことがあるのは、歴史の事実として起きています。

素であれ

聖智・仁義・巧利を絶ち棄てれば人民は幸せになる、とした後で、この三つでは足らないからもう少し説明してあげましょう、という流れを取っています。『老子』の中では少し珍しい形態なので、「以為文不足」はもう少し違う意味を持っているのかもしれません。
ただ、その説明というのは、もったいぶった割には、「ありのままの姿で、私欲を少なくせよ」ということだけなのです。

つまり、「あまり背伸びはしなさんな」そして、「私欲は少なくしなさい」というのがこの章の教えのようです。
ごく分かりやすい教えですし、同時になかなか実行できにくい教えともいえます。
ただ、凡人に優しいことに、『老子』先生は、「私欲を無くせ」とは言っておらず、「私欲を少なくせよ」と言っていますので、何とか研鑽できそうな気もするのです。

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