マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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長谷町垣内のイタダキ

2011年01月31日 07時26分43秒 | 奈良市(東部)へ
当主からはじめるお正月の慣わし。

その家の行事はイタダキと呼ばれている。

大きな2段重ねのモチはもちろん鏡餅。

この家ではオカガミと呼んでいる。

その上には菱形のモチが置かれる。

なかには小豆が入っている。

その色は多いほど赤い。

そういうことからなのかそのモチはアカノモチと呼んでいる。

真上には大きな葉付きのダイダイ。欠かせないアイテムだ。

膳の後方両角には葉付きのコウジミカンが置かれた。

前方にはトコロイモが2個。

ウラジロを敷いて10個のクシガキが前に。真ん中が六つ。

両サイドには2個ずつさす。

夫(二)婦(二)なか良く、なか(仲)む(六)つまじくの語呂合わせの10個だ。

傍の膳には12個のマルモチが盛られた椀も置く。

うるう年のときは13個になるモチはツキノモチと呼んでいる。

一年の月数を表している。

正月の朝、起きた当主は若水(かつては井戸水)で顔を洗う。

そして家の神さんに向かってそのイタダキを持って頭の上のほうに持ち上げる。

その際には「センマイ、センマイ」と3回唱えるように口を開ける。

なんの意味があるのか判らないという奈良市長谷町のNさん。



イタダキの作法は家族一人一人が行う。

目が覚めて起きてきたらその行為をする。

「イタダキしたでー」と言って家族に伝える。

神さんの所在を示すものはなにもない。

そこが神さんと思えばその位置になるのだと当主が話す。

家の守り神だとされるそれはトシトク(充てる漢字は歳徳であろう)の神さんだと。

ローソクを灯して拝む。

そこに向かって「センマイ、センマイ」と言う。

これは何を意味しているのか家族も判らないというが、年神さん迎えの行為には違いないだろう。

ちなみにイタダキの膳にも祝賀の語呂が隠されている。

どこかと言えばその膳なのだ。

「代々、処に住む」の意を持つダイダイにトコロイモ。

さて住むは何だろうか。

他所ではそれは炭だった。

長谷町にはこれがなかったとしてもそれでいいイタダキの膳なのだ。

こうして当家の正月が始まった。

町は五つの垣内で構成されている。当主が住むのは垣内脇(垣内中とも)で他には奥谷(おくがたに)垣内、西谷(にしたん)垣内、清水垣内の峯出(むねで)垣内だ。

垣内脇は伊勢講や十九夜講も行われている。

他垣内はおそらくされていないだろうと当主は話す。

(H23. 1. 1 EOS40D撮影)