昨年のサブ・プライム・ローンや派生商品の破綻が、リーマン・ショックとして現れた。派生商品(デリヴァティブ)を扱ってリターンを稼ぐヘッジファンドとは短期で上手く波を読む小さな集団だったが、それが大きくなり、更に同じ投資パターンになり、そして破綻したというだけであった。ヘッジファンドの性格が明らかになった。そんなに大儲けできるファンドは一部で一時しか存在できない。(金融工学を用いたらリターンが増大するなら、全体として金利が上がることになるがそんなことはありえない)<o:p></o:p>
むしろ金融工学というモデルは、高額のサラリーで破綻した場合もあわよくば政府金融資金が得られると世間に証明した。これは、投資でもなく、投機でもなく、賭け事のようで「ポンツィ金融(ねずみ講のようなもの)」とはけだし明言だ。<o:p></o:p>
今回の金融パニックは軽々しい政治的発言とパニックをあおる情報主導が過ぎた。もともと情報から出た金融バブルだからこの結果もむべなるかなだ。新聞にはこっそり載っているが今では貿易収支も黒字回復で円も高い。株価も回復している。経済学者がこの騒ぎの結果を何も分析しないのはどうしてだろう。<o:p></o:p>
しかし、経済のパラダイム変化は確かにある。トヨタは最高益から赤字に転落したように、売れすぎた状況が転換期となり社会のニーズ、生活が変わったのが明らかになった。これと、リーマンショックが重なり、不良債権の積みあがりおよび自動車と関連製造業のから始まった製造業の収縮と消費心理の低迷となった。<o:p></o:p>
そこで、急に自動車業界は、環境対応でハイブリッドだ、LEDだという変わり身の早さが求められている。王道は、軽くて丈夫な車に小さく精密なエンジンだが、分かりやすい革新がないと売上が上がらないこと、軽量化は素材の原価が高くなることからそのような新車は今のところない。<o:p></o:p>
変わり身だけ、波に乗るだけが良いのだろうか。1990年代から、産業の基幹であるものづくりは変化しただろうか。例えば、車のエンジンは精度が上がり、軽量化し、摩擦が減り、最適なバルブタイミングになったろうか。ハイブリッド技術はハイテクである。それはローテクなエンジンの組上げがあってこその前提だ。表面の技術に浮かれるのはよいが、スペックにでない「機械」の基本をよく磨き上げる、その人材を確保するのも大切だろう。ものづくりの基礎体力をつけないと中期的に競争力を失う。目前の利益とリストラにはしる無責任経営が蔓延る。日本の強みは、「抜群の品質」だろう。(比較技術でみる産業列国事情 森田正規 参照) つまりは、時代の波に乗る商品企画と製造技術の両輪がなければ製品として競争力と満足度を失う。<o:p></o:p>
20年以上使っている自転車のベアリング(堺のシマノ)はグリスアップすれば未だに滑らかに回る。ものづくりの基本を考えつつハブの締め合せを楽しむ。<o:p></o:p>